人長さんのこれまでの記事を総ざらい
「四川料理のスゴい人」こと、日本橋の四川料理店リバヨンアタック料理長・人長良次さん。
人長さんのレシピを集めた書籍も絶賛発売中です。
▼人長さん初の著書『四川料理のスゴい人 自宅でつくる本格中華レシピ』(三才ブックス)
これまで『メシ通』でもさまざまな中華レシピを解説し、多くの方から評価をいただきました。
今回は、これまでの連載記事からあらためてそれぞれのレシピのコツや難点をまとめて解説。
あと、もうちょい簡単にしたり、もうちょいおいしくしたりというテクをうかがってみました。
- INDEX
01:「麻婆豆腐の作り方」を四川料理のスゴイ人に教わったら、目からウロコが3回落ちた
人長:それまで自分のレシピを誰かにお伝えする、ということをほとんどやったことがなかったんです。『メシ通』のスタッフのみなさんとも「はじめまして」で僕も今みたいにこんなにベラベラしゃべるような感じじゃなくて、おしとやかにやってたと思うんですよ。
──ふむふむ。
人長:緊張しつつも、自分の得意料理である麻婆豆腐を、見てくれる人に伝えたいという思い、それだけですよね。おもしろくしようという発想もなかったですね。四川料理が大好きな人間として、こういう仕事をいただいたからには、うまいものを伝えてやろうという気持ちだけでしたね。それがこういうカタチでバズらせていただいて。
──「バズらせていただく」。
人長:得意料理の麻婆豆腐を120%の全力でお伝えしたんで。一生懸命やりすぎて、そのときのことはあまり覚えてないんです(笑)。
──そんなに完全燃焼だったんですね。
人長:いただいた仕事は全力でやりたいので。手を抜けない性格なんですね(笑)。写真を撮られながら、ライターさんと話し合いながら料理するなんて、やったことがなかったんです。うまくやらなきゃって緊張もありましたし、初めてのことだらけで。
──そうなると、初めてやったのにここまで超バズったのって、すごいことですね。
人長:あれがあったから今も続けてやらせてもらってますし。こうして本も出せましたし。
本を出したことはホントにめちゃくちゃうれしいし、このチーム全員が努力した結果だと思うんですけど、僕はこれで満足したくなくて。あくまでもこれは通過点。みんなでこれからもっとすごいことやおもしろいことができるんじゃないかなって、なんとなく思ってます。
──ありがとうございます。あれ、泣いてます?
人長:な、泣いてないが!
──ということで、麻婆豆腐の記事を作ったときの人長さんは、初めてのことで緊張しすぎて覚えてないという衝撃の事実が明らかになりました。
02:「四川料理のスゴイ人」に、 辣子鶏(ラーズーチー)の自宅用レシピを教わってきた【ハマる辛さ】
──連載2回目が辣子鶏。人長さんが中国で食べて驚いて、お店を立ち上げるモチベーションともなった料理ですね。ネギがおいしいんで、焼きすぎないことと、でも生じゃダメってところがポイントですよね。
人長:ネギの生焼けはダメっすね。ちゃんと火入れすると甘くなるんで、火入れが大事です。鶏肉も油通しするかわりに片栗粉をつけて焼くとかのポイントを抑えると、そんなに難しい料理じゃないですよね。
実際に作ってくださった方たちも、思ったよりも簡単にできたと言ってくれてるし。あとは海外に住んでる人なのかな。僕のレシピで作っている人がいて。外国に住んでいる人も見てくれているということがホントにすごいことだと思っていて。
──工程的に省けるところはありますか。たとえば鶏肉はスーパーの惣菜の唐揚げを買ってきて代用するとか。
人長:できますよ。ぜんぜんアリだと思います。料理は、作った人がおいしいと思えばいいんで。このレシピ通りやってほしいって思いもないし、調味料の分量も、その人のニュアンスというか、フィーリングでいい。
辛いのが苦手なら辛い具材を減らせばいい。その人が料理するきっかけになってくれれば、それでいいんです。
03:自家製ラー油の作り方を「四川料理のスゴイ人」に教わってきた【ハマる味】
──「一度にできる量が多すぎる」という指摘がありましたね。でも、いまとなっては人長レシピの品数が増えているので、この自家製ラー油をたくさん作っておいても、消費できるようになったかと思います。
人長:ふむふむ。酸辣湯麺もエビチリも、火鍋にも使うし。雲白肉もよだれ鶏にも、盛りだくさんで使っているので。500ml作っても、それこそ一週間で使っちゃって「来週またラー油を作んないといけないじゃないか」みたいなね(笑)。
──そもそも、半量でも作れるって書いてありますもんね。それに、あんまり少ないと作りにくくなっちゃう。
人長:あと、自家製ラー油でさらにこだわりたい人は、八角やシナモン、陳皮も入れると香りが良くなって楽しいというか、おいしいので、ぜひチャレンジしてほしいところです。クローブを入れてもおもしろいです。
04:四川料理のスゴイ人が猛プッシュする「肉味噌ストック」を大量に作り置きして毎日の献立を天国にする方法
──この記事で評判が良かったのは、卵料理に入れる水溶き片栗粉。プロの調理テクニックとして、いろいろ応用できそうです。
人長:これはもう、我ながら目からウロコだと思います。卵焼きが冷めても水が戻ってこなくなるんですよね。
このときはニラ玉と担々麺を作りましたけど。肉味噌ストックを使った料理は自分のレシピ本にもたくさん紹介させていただきました。麻婆茄子とか、ぜひやってみてほしいです。
05:四川料理のスゴい人に教わる「酸っぱ辛~いサンラータンメン」冷たいやつと熱いやつ編
──「酸っぱい・辛い・トロみ」のバランスの取り方がポイントだなと思いました。
人長:お酢を入れるのを最後にしないと、酸味が飛んじゃうんですよ。そしてトロみをつけすぎると麺がダンゴになっちゃうんで、片栗粉はあまり硬くしないでねと強調してます(笑)。
とはいえ、お酢は後からお好みで足したりもできるんで、実は気楽にやれるんですけどね。
──そうか。ラーメンってお酢をお好みで差したりしますもんね。
人長:麺って、一番最初は、穴が開いてるところに生地を押し付けてニューって作ったのが麺の始まりだったような話を聞いたことがあります。
──生地をニョローっと引っ張って細くするんでもなく、刀削麺みたいに削るんでもなく。
人長:そうそう。トコロテンみたいにニューって出したのが発祥だとか。四川省の市場の近くにおいしいおそば屋さんがあって、そのお店の麺がそばの実を使った麻辣の麺なんですよ。
市場の近くなんで朝6時くらいからやってるんです。10元なんで、日本円にすると1杯170円くらいかな。そのおそばの中に入っている食材がタケノコなんですけど、乾燥させてスモークさせてるんですよ。それを一回戻して、麻辣で牛肉と煮て。これがめっちゃうまいんです。
──そばにタケノコの燻製は渋い。食べたい。
人長:そこで朝6時からそばを食ってから、市場に買い付けに行くみたいな。向こうに買い付けに行ったときは、それがルーティンでしたね。
そのそば屋が、麺棒で伸ばして切る方式じゃなくて、店の前でギューって押し出す方式だったんです。もちろん人力です。手押し井戸のアレみたいなので、グッと押すと麺がニュニュニューって出てくるんです。
──立ち食いそばのあの店みたいですね。
人長:そんで、そばを茹でるお湯が、そば湯みたいにドロドロになってるんですけど、朝6時の時点ですでにもうすんごい色してるんですよ(笑)。それくらい流行ってるお店なんですね。
06:【四川料理のスゴい人】家庭のキッチンの火力で「プロ並みのチャーハン」をつくる方法
──コメントにあったのが、いちどに作る量を1人分のご飯200gで……としてますが、できれば一気に2人分作りたいというご意見もありまして。
人長:たしかにね。でも、これは料理人目線かもしれないですけど、1回3分で作れますんで(笑)。1人分を2回作る形でなんとかやっていただければ……。というのも、ご家庭の火力では、2人分のチャーハンをパラパラにするのが難しいです。こればっかりは難しい。
──火力の問題ですか。
人長:お店でも、チャーハン4つの注文がきたりしますが、僕は4人分一緒には作らないんです。それは、厨房のあの火力ですら、しっとりパラパラにはできないからなんです。4人分の注文なら、2回に分けて作ります。
僕が納得できるチャーハンを作るには、お店の火力でも2人分が限界なんです。
──中華専門店の厨房の火力でさえ、パラパラ仕上げなら2人分しかやれない。
人長:まとめてたくさん作っちゃうと、べっちょりしちゃうんです。チキンライスみたいな感じ。でもチキンライスはそれがうまいわけじゃないですか。
でも、これは「しっとりパラパラなチャーハンを作る方法」なので、わかっていただくしかないかなと。
07:ずっと作ってみたかった──「エビチリ」を自宅で料理したい人のための本格レシピ【四川料理のスゴい人】
──これもネギがうまいんですよね。あと、ご家庭用のエビチリのレシピはケチャップ臭くなりがちというのが弱点かなと思ってたので、それを解決できるのがこのレシピのいいところだなと。
人長:ポイントとして、ケチャップはよく炒めること。ケチャップに火を通すことで、臭みは解決できる。発色も良くなりますし。
それと、ケチャップの酸味を飛ばすことで味がまろやかになると思うんですよね。尖った酸味をまろやかにすることで臭みも消えるということだと思うんです。
──それこそアレですよね。どっかのお店でケチャップ感の強いエビチリを食べちゃった経験があって、エビチリはそんなに好きじゃないんだって人にこそ、このレシピを試してほしいなと思います。
人長:エビだけじゃなく、玉子でもできますしね。ウチもまかないとかで、油淋鶏が余っちゃったときに、油淋鶏をチリソースに絡めたりします。うましですよ。スーパーでお惣菜の唐揚げを買ってきて、チリソースだけ作って上からかけたりフライパンの中で絡めたりとか。そういうのもぜんぜんアリだと思います。
──「トリカラチリ」じゃん。もう「なにチリ」でもいいんですね。
人長:ご飯のオカズに最高ですよ。白身魚でも合いますし。チャン(※)して片栗粉まぶして焼いたらフリットみたいになるんで。中もプルプルに柔らかい。それにチリソースをかけたら、いい感じですよ。
(※)チャン:肉や魚などの食材に下味をつける工程のこと
──チリソースって、いろいろ応用が効くソースなんですね。
人長:自分のレシピ本でも解説しましたが、肉や魚をチャンしたり、チリソースをほかのものに使ったり、工夫次第で勝手にバリエ増やせるぞと。調理法を応用していただくだけで、オリジナルの料理も作れるぞと。
08:【やみつきになるシビレと辛さ】「火鍋」のレシピを四川料理のスゴい人に教わった【恍惚の激辛鍋】
──次は火鍋です。このレシピのメインって、実は鶏団子ですね。
人長:これには感動しましたね。
──意外と、火鍋って作るのが大変な料理だと思ってる人もいるようです。
人長:僕のイメージですけど、麻婆豆腐を作るのとそんなに変わらない気がするんですけどね。それのシャバシャバ版って感じで。お野菜も、スーパーにカット済の鍋用の野菜セットが売ってますよね。あと、おでんの具とか。もう、なんでも入れていいんで。
──スープ、具材、つけダレと続くので、いろいろやってもまだ完成しないんだという印象があるみたいなんですけど、それは記事の構成の問題ですね。僕の反省点です。
人長:火鍋のスープ自体は、四川料理で使う基本的な調味料で作れるので、特別なものは不要ですし。具材はカット済のものを買ってくればいいし、つけダレといってもオイスターソースと黒酢とごま油だけなんで。
──器に入れるだけですしね。
人長:火鍋はつけダレをつけることで、めちゃくちゃおいしくなるんです。まあ、なくても食べられますけど。いま日本にある火鍋のお店って、ほとんどはつけダレが無いと思うんです。もう僕はMyタレを持っていきたいくらいなんですよ。
わかってもらいたいのは、つけダレがなくてももちろんうまいけど、つけダレを使うとさらにおいしいぜということですね。
──あとは牛脂ですね。コクが増す。
人長:重慶の火鍋って、牛脂を使うスタイルが多いんですよ。成都は牛脂なしの火鍋なので、入れなくても成立するんですけど。僕は重慶の火鍋を食べたときに、これはうまいと感動したんで、牛脂を入れたいんですよね。
09:自宅でできる「青椒肉絲」の作り方。シャキシャキうまいピーマンと豚肉のハーモニー【四川料理のスゴい人】
──野菜がシャッキリしていることがポイントだと思うんですけど。
人長:先にタケノコと野菜を炒めておいて、ボウルにどかす。このひと手間で青椒肉絲はグッとシャキシャキでおいしいのが仕上がるんだよと。
「お肉入れて野菜入れてタレ入れて……ってやったら、最後クタッとしちゃった」ってなりがちなのが青椒肉絲と思うんですけど、このワンポイントを手間かけるだけで、もっとおいしいものができるんで。
──人長さんのレシピによくある、「ポイントとなるひと手間で仕上がりがグッと向上する」ってことがわかりやすく出ているのが、この青椒肉絲だと思います。みなさんにも注目していただければと思います。あと、ダブルバーナーは真似しないでねと。
10:保存版・自宅で最高の「餃子」を包んで焼きたい人のためのレシピ【四川料理のスゴい人】
──さて、餃子のレシピと焼売のレシピについては、まとめてコメントをお願いできれば。
11:握る、蒸す、焼く──自宅で楽しむ「焼売」のつくり方【四川料理のスゴい人】
──これ、餃子と焼売の両方に共通するんですが、皮かアンコのどっちかが余りがちという問題がありまして。
人長:ひとつ、その解決策として、アンコが残った場合。これは蒸しちゃえばいいんですね。包まずに、お皿に平べったく並べて、その上に柴漬けとかキューリの漬物とかをちょっとお肉にのせて蒸してあげる。
蒸し団子みたいなのができて、すっげーうまいんですよ。ベースは香港の料理なんですけど、ここにシーズニングソースみたいなのをかけて食べるんです。美味ですね、これは。
──うまそうですね。漬物を使うのはトンチ効いてますね。
人長:あと、アヒルの卵を塩漬けしたものがあるんです。鹹蛋(シエンタン)っていいます。これを刻んで入れてもめっちゃうまいです。日本だと業務用のスーパーとかで売ってるんですけど、6個入りで300円くらいですかね。
この食材は中国だとポピュラーで、おかゆによく入れるんですよ。ホテルの朝食に行くと、だいたいこの塩漬けのゆで卵が置いてあって、この塩味だけでおかゆを食べたりするんですけど。パクパク食べられて、非常においしいです。
──おかゆ、好きー。
人長:アンコに関しては、肉団子として蒸してもよし、焼いてハンバーグみたいにしてもよし、丸めて揚げ団子にしてもよしだと思うんですよね。でも蒸すのがいちばん楽だと思いますよ。
──たしかに。揚げものはめんどくさいですし、どうせ蒸籠を使うなら一緒に蒸してもいいし。
人長:あと、もし皮が余っちゃったら、普通に冷凍しちゃうってのがあるんですけど、調理するとしたら多めの油で揚げ焼きみたいにしてサラダに散らす、要はクルトン代わりにしちゃう。塩と山椒をかけて山椒せんべいみたいにしてポリポリするとか。そういうのもアリかなと思うんですけど。
──とはいえ皮がそんなに余るってことはあまりないと思うんで、考えて買いものをするか、余ったら冷凍してくださいという感じですね。
12:四川料理のスゴい人に四川風と日本式の2種類の「回鍋肉」を作ってもらったらどっちもウマくて驚いた
人長:コメントを見てると、「回鍋肉」という名前の意味の解説に「へぇ」と思ってくださった方が多いようですね。
──「皮付きの豚の塊肉を使うのはハードルが高い」というコメントがありました。
人長:もちろん皮なしのお肉でも作れますよ。でも僕らも実際、記事では皮ありを推しちゃってましたからね。皮の近くのコラーゲンやゼラチンがおいしいんだぜって言っちゃってましたからね。
でも、皮ありをわざわざ探さなくても、普通に売ってるブロックの豚肉でいいんですよ。
13:「甜醤油(テンジャンユ)」を自作すると「よだれ鶏」から「雲白肉」まで料理できて楽しいのだ【四川料理のスゴイ人】
──鶏を低温で茹でるときに、8倍から10倍のお湯につけておくということが意外と重要だなと思いました。以前、鶏肉をお湯に沈める低温調理にチャレンジして、火がうまく通らなかったときがあって。あれ、お湯の量が足りなかったんですね。熱容量の問題。
人長:冷たい鶏肉でお湯の温度が冷めないように、あの量のお湯を用意してくださいということなんです。低温調理器は、自動でお湯の温度を保ってくれるじゃないですか。あれはあれでいいですけど、持ってない人のほうが多いんで。たくさんのお湯につけておく方法なら、特別な道具がなくてもできますからね。
──甜醤油はいちど作ると使い回しが効いて便利ですね。使う材料の種類が多いから、けっこう難しそうな雰囲気がありますが。
人長:甜醤油は、八角とかシナモンを入れてますが、それ無しでも作れることは作れるんです。ただ、砂糖と醤油と酒だけだとホントにただの甘醤油になっちゃう(笑)。せめてネギとショウガくらいは入れたほうがいいと思います。
たとえばシナモンとかも、最後にパウダーをふりかける方法でもいいかもしれないですね。なんかそうやって、いろいろ工夫してやってみてほしいです。
14:四川料理の代表選手「水煮牛肉」は「辛い・うまい・食感」の三層構造がジュワッと刺激的なんです【四川料理のスゴイ人】
──お皿の中でラー油を作るのが怖いという意見がありましたね。陶器の耐熱温度は1100℃くらいなんで、180℃の油を心配する必要なんてないんですけどね。
人長:どうしてもって場合は、ステンレスのボウルでラー油を作って後入れでも大丈夫ですよ。
あとこれね、残ったタレに麺を入れるといいんですよ。「水煮牛肉麺」にしちゃう。僕はわりとなんでも残った汁に中華麺を入れるのが好きなんですよ。麺が好きなんで。あと、厚揚げとか入れてもおいしそうですよね。
──いいですね、味の濃さにメリハリが出ていいですね!
中国で食べて驚いた四川料理の思い出
──さて最後に、これからの連載で作ったら良さそうな料理は何か、探りたいと思います。人長さんが中国で食べて、ヤベえって思ったものがあれば教えてください。
人長:いっぱいありすぎるからなー。むずかしいなー。あ、豚肉のアイスバイン。どうですか。
──アイスバインは、塩漬けの豚肉を香味野菜や香辛料とともに煮込むドイツ料理ですね。
人長:中国にも、豚のヒジかスネのでっかい塊肉を使った料理があるんですけど、それはすっげえと思いましたね。ハンドボールくらいの大きさの肉が、もうトロトロに柔らかくしてあるんです。
味はいろいろ選べて、魚香(ユイシャン)のソースがかかったりとか、豆鼓のソースがかかったりとか、豆板醤のソースがかかったりとかしてる料理で。僕は魚香(ユイシャン)のやつを食べたんです。
──魚香(ユイシャン)とは、中国で一般的に使われる調味料。もともとは淡水魚を発酵させたものの汁を使った調味料だったけれど、その作り方が失われて、魚を使わずに唐辛子を乳酸発酵させた「泡辣椒(パオラージャオ)」を代わりにして復刻されたやつですね。詳しくは人長さんのレシピ本にあります。
人長:それまでも勉強はしていたから、魚香(ユイシャン)について知ってはいたんですけど、向こうで実際に食べたのはめちゃくちゃうまかったですね。
──僕ら、魚香(ユイシャン)と聞いてもあまり馴染みがないですからね。食べてみたいです。
人長:あとはやっぱり、辣子鶏発祥のお店の辣子鶏ですかね。衝撃を受けた度合いで言うと、辣子鶏が一番ですね。それまで日本で食べていた辣子鶏ってなんだったんだと思いましたからね。
▲専門店の辣子鶏を前に満面の笑顔の人長さん(写真提供:人長さん)
──人長さん、辣子鶏ホントに好きですもんね。
人長:まず唐辛子山盛りのビジュアルがひとつ。もうひとつは、そのお店では鶏を軒先で捌いているんです。毛はむしってあるんですけど、その丸鶏を包丁でをバスバス切るところから見られるんですね。
人長:僕が抱えられるかどうかという巨大なサイズの丸太のまな板の上で、じいちゃんが丸鶏をバンバン切ってるんですよ。そのじいちゃん、手にいっぱい絆創膏みたいなのを巻いてるんで「あー、いろいろと切ってるんだろうな」って(笑)。
──ワイルドいい話ですね。
人長:横に山のように唐辛子が積んであってですね。鶏を揚げて、唐辛子を炒めて、大きなお皿にワサーって。なにしろ辣子鶏だけの専門店なんで、それがドンドン出てくるんですよ。あの光景は衝撃でしたね。
人長:だから、このお店を作るときに「あの料理を日本でもやりたい」と思ったんですよね。それが今やね、ウチの看板メニューのひとつとなってるんで。あのときの驚きを他の人にも味わってほしいんですよ。
初めてウチの店に来た人は、見たら「なにこれ!?」って言いますから。でも食べてみたら、辛みよりもうま味や香りのほうが多くてね。辣子鶏って、見た目とは裏腹の味で、僕もそれに感動したんですよね。
──人長さんをシビレさせた辣子鶏。これは連載のレシピで作ってもよし、お店に食べに行ってもよしですね。そしてこれからの連載では、まだなにを作るかわかりませんが、中華のアイスバインも楽しみですし、いろんな味のソースを作るってのもおもしろそうですね。
・・・
「四川料理のスゴい人」人長さんレシピでなにかを作ってみて、料理が楽しくなったという人も多いと思います。
こうしてあらためて連載をチェックしてみると、作ってみたい料理や、いろんなアレンジが思い浮かんできませんか。
スーパーで買ってきた唐揚げにエビチリのソースをからませてみたくなったりしませんか。
人長さん著者の初レシピ本・『四川料理のスゴい人 自宅でつくる本格中華レシピ』(三才ブックス)でも、これ以外のメニューをいろいろ紹介していますのでぜひチェックしていただければと思います。
自宅での料理が、かつてないくらいに身近になった時代でもありますし、なにげなく記事を読んでピンときたものにチャレンジするのもおもしろいかと思います。
あ、あとアレです。これからの我々の活躍にますますご期待ください!
撮影:平山訓生
お店情報
リバヨンアタック
住所:東京都中央区日本橋室町3-4-4 OVOL日本橋ビルB1F
電話番号:03-3548-0840
営業時間:ランチ/月曜日〜土曜日11:30~15:00(14:30 LO)、祝日11:30~14:30(14:00 LO)
ディナー/平日17:30~翌0:30※金曜日のみ翌1:00まで(23:00 FLO/24:00 DLO)、土曜日17:30〜翌0:00(23:00 FLO/23:30 DLO)、祝日17:30〜22:00(21:00 FLO/21:30 DLO)
定休日:日曜日(20名様以上のご予約の場合は、営業させて頂きます)
書いた人:鷲谷憲樹
フリー編集者。ライフハック系の書籍編集、専門学校講師、映像作品のレビュアー、社団法人系の広報誌デザイン、カードゲーム「中二病ポーカー」エバンジェリストなど落ち着かない経歴を持つ器用貧乏。
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