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Thursday, October 6, 2022

まだUnityはゲーム制作を重視しているのか? - GamesIndustry.biz Japan Edition

tahupedascabe.blogspot.com ironSourceとの取引を控え,CEOのJohn Riccitiello氏がUnityの未来や損失の歴史,レイオフに続いた自社株買いについて語る
まだUnityはゲーム制作を重視しているのか?

 多くの人々はまだUnityを単なるゲームエンジンメーカーだと考えている。これは技術的には正しい説明だが,同社のビジネスに対して偏った印象を与えてしまう危険性がある。

 ゲーム制作に必要な基本ツールを含むUnityのCreate Solutions部門は,エンゲージメント,マネタイズ,ユーザー獲得に重点を置くOperate Solutions部門よりも,実は会社の中で小さい割合だ。そして,それは以前からそうだった。

 このことは,ゲームをビジネスよりもアートとして考えたい開発者に不安を与え,その不安はUnityがアプリ収益化プラットフォームironSourceと合併する計画を発表し(関連英文記事),CEOのJohn Riccitiello氏が収益化を気にしない開発者の知的能力について発言したこと(関連英文記事)で深刻化した。(彼は後にこの発言について謝罪している)

 GamesIndustry.bizの取材に対して,Riccitiello氏は会社の規模が収益化に大きく傾き,制作から遠ざかっているわけではないことを伝え,開発者を安心させようとしている。近年,Operate Solutions部門の収益が,Create Solutions部門の収益の2倍になることが多く,ironSourceがそれを悪化させそうだとしても,Riccitiello氏は同社のビジネスの両サイドは“ほぼ均等に”進行する見込みであると語る。

「開発者の中には,ゲームを作ることだけを考えている人もいると思いますが,ライブゲームのパブリッシングと運用という複雑な迷宮を経験した人なら,それ以上のものがあることを知っています」

 同氏は,Createサイドの事業は“当社のリソースの大部分が割り当てられた場所”であり,今年はOperate部門の収益よりも速いペースで成長していると語った。(今年の第2四半期,Create部門の収益は前年同期比66%増の1億2100万ドル,Operate部門の収益は13%減の1億5900万ドルだ)

 ironSourceが格差を広げることについて,Riccitiello氏はironSourceの事業の大部分はOperateサイドの事業にうまく合わないパブリッシングであるという。

 「広告ネットワークだけでなく,クリエイターがゲームを世に出すためのツールとして,もう少し活用できるのではないかと考えています」とRiccitiello氏は語る。「そのほかにも,彼らが提供するサービスはCreateサイドとより密接な関係にあると捉えています」

 また,書類上は収益をCreateかOperateのどちらかに帰属させる必要があるにせよ,Riccitiello氏は片方がゲームを作る場所,もう一方が収益化する場所というように,明確に分かれているとは考えていないようだ。Operateサイドはアプリ内課金と広告のほか,ホスティング,マッチメイキング,有害ユーザー対策のチャットフィルタリングなどのツールを提供するという。

 「開発者の中には,ゲームを作ることだけを考えている人もいると思いますが,ライブゲームのパブリッシングと運用という複雑な迷宮を経験した人なら,それ以上のものがあることを知っています」と,Riccitiello氏はいう。「ですから当社の使命とビジョンは,ホスティングから音声,マルチプレイヤーマッチメイキング,アナリティクス,適切な場合はマネタイズまで,あらゆる問題に真っ向から取り組み,制作を支援することだと考えています」

 「ironSourceの背後にあるビジョンは,ironSourceの持っているパブリッシングツールが,開発者にABテストや他の形式のテストよりも優れたフィードバックを与え,より人々に愛される製品を作れるよう助けることです。そして開発者はそれを使うことも使わないこともできます」と,同氏は付け加える。

ゲームへのこだわりは全くないのか?


Unityクライアント「Vectual」が都市計画用にパリをゲームエンジンで再現
まだUnityはゲーム制作を重視しているのか?

 Unityがゲーム制作よりもマネタイズに重点を置いているという開発者の懸念は解消されるかもしれないが,ゲームではないものに重点を置いているという点についてはどうだろうか?

 第2四半期の収益報告書で,Unityは“業界や地域を問わずゲーム外のビジネスを加速させた”ことを重要な成果の1つとし,防衛関連企業のCACIや,自動車メーカーのメルセデス・ベンツを主な顧客として挙げた。ゲーム業界以外の会社からの収益は,わずか6か月前の33%から,当四半期には40%を占めるまで増加したという。

 Riccitiello氏は,Unreal Engineを開発したEpic Gamesがゲームだけに注力しているわけではなく,建築,エンジニアリング,建設業界向けのサービスを強化するために,Autodeskとの提携を発表したばかりであることを指摘する。また,タンパク質フォールディング,核融合,交通管理など他業界で開発されたシミュレーションをゲームに再採用し,それらの世界をよりダイナミックに表現することに対する需要は大きいと付け加えた。

「何度も何度も,当社が学び,経験していることは,ゲーム以外の仕事をすることがゲームの仕事を向上させることです」

 「はい,当社はゲーム以外のビジネスがあります」とRiccitiello氏はいう。

 「はい,それらは収益を生み出します。そのおかげで,当社はより健全な企業になり,ゲームにもっと投資したいと思った時に投資できるようになります。しかし,当社の技術に対する理解を深め,より良いゲームエンジンを作ることにも繋がるのです」

 同氏は,プロアスリートが本業のスポーツのパフォーマンスを上げるために有酸素運動をするのと同じだと例える。

 「何度も何度も,当社が学び,経験していることは,ゲーム以外の仕事をすることがレンダリングを向上させることです」と,Riccitiello氏はいう。「物理演算,ライティング,UI,UX,特定の問題を解決しようとするクリエイターのためのワークフローを改善できます。これらはゲーム業界を助けます」

 「私も当社やEpicのような会社が,ゲーム以外の仕事をする時,ゲームにあまり集中していない世界を想像します。しかし。それはラファエル・ナダルが身体のパフォーマンスを向上させるために筋力トレーニングをする時,テニスに集中していないというようなものです。それは,真に正しい考え方ではありません」

株価の低迷


Unityの株価はこの1年で打撃を受けた(チャートはYahoo Financeによるもの)
まだUnityはゲーム制作を重視しているのか?

 Unityの株価は,ピークとなった11月の210ドルから約84%下落し,2020年9月のIPOから40%近く下落した32ドル前後で取引されている。ゲーム分野全体で,この1年多くの企業が下落に見舞われているが,Unityの下落の度合いから,Riccitiello氏がどのように考えているのかを聞いた。

 「私は株式市場のアナリストではありませんが,投資家との対話に多くの時間を費やしています」とRiccitiello氏は語る。「知るべきことの1つは,ゲーム業界とテクノロジー企業では,取引が全く異なるということです」

 ゲーム会社は通常,企業価値(負債と手元資金を考慮した発行済み株式の累積価格)が年間収益の5,6倍になるような価格で取引されているという。11月のピーク時,Unityは収益の約50倍の企業価値で取引されていた。

「なぜあれほど高く取引されたのか,なぜこれほど低く取引されるのか,いつも分かりません」

 「なぜあれほど高く取引されたのか,なぜこれほど低く取引されるのか,いつも分かりません」と,Riccitiello氏は語る。「しかし,当社はゲーム会社ではありません。当社は,他のハイテク企業とともに取引しており,一緒に上場した企業に対して,信じられないかもしれませんが,かなりの金額で上回っています」

 同氏は,投資家にとって慰めにならないことを理解しているが,株式市場にとって例外的に難しい1年であったという。

 「私は世界経済が復活し,株価が上昇することを信じています。しかし,上から下までの何百ものハイテク企業を見れば,当社が中くらいであることが分かるでしょう」と,Riccitiello氏はいう。「また,当社より6か月前,6か月後に上場した企業との比較でも平均を上回るパフォーマンスを示しています。当社は,ゲームを作っているわけではないのでゲーム会社と比較することは間違っています。当社はSaaSと比例収益型ビジネスを融合させた企業なのです」

黒字化への転換


 Unityは,2004年に設立されたにもかかわらず,まだ黒字の四半期を経験していない。Riccitiello氏は2014年からしか指揮をとっていないが,それでも長い間の赤字経営が続く戦略について聞くには十分な時間だ。

 同氏はまず,Unityの頃にIPOした企業のうち,利益を出していたのは10%程度であったことを述べ,それが一般的な現象であることを指摘する。

 「当社が2021年と2019年を通して行ったように,40%の成長を報告しても利益を出している企業はほとんどありません」と,Riccitiello氏はいう。「重い,重い成長を支えるために雇用しているからです。金融市場はそれを理解しており,極端な成長段階にある企業は採算が取れず,時間をかけてどんどん利益をあげ,収支が均衡し,収益性を高めていくと予想しています。これはまさに,当社がS-1(IPO前の申請書)で説明したことであり,実際にやってきたことなのです」

「当社は,4〜5年ごとに製品をリリースする永久ライセンスビジネスで,なかなか製品が良くならなかったです」

 「私がUnityに入社した最初の頃までさかのぼると,こんな風に考えられます」と,Riccitiello氏はいう。「当社は,4〜5年ごとに製品をリリースする永久ライセンスビジネスで,なかなか製品が良くならなかったです。素晴らしい製品で,インディーズに愛されていましたが,トップ500に入ったタイトルはゼロでした。つまり,当時の重要なゲームのほとんどはUnityで作られていなかったのです」

 Riccitiello氏によると,同氏の指揮の下,UnityはSaaSモデルへ移行し,ゲーム分野の研究開発費を4年間毎年2倍にし,年間研究開発費は合計16倍になったとのことだ。また,広告ビジネスを立ち上げ,Createサイドへの投資による損失を補うために第2の収入源を確立し,会社を新しい産業へと導いたという。
 
 「当社は,ゲームが主要なメディアになった世界では,リアルタイム3Dがゲーム業界の外に出て,ゲーム業界を強化する強みになると考え,これが市場に最も貢献できる正しい方法だと思い,そのパターンをほぼ踏襲しました」と,Riccitiello氏は語る。

 同氏によると,この動きの結果としてUnityのマーケットシェアは,10%台前半から70%以上になり,コンソールでは“ほとんど存在しない”状態から,プラットフォームによって30%から70%の間になったという。

 「利益を出すべきですか?そうかもしれませんが,それでは今のような形で業界に貢献することはできません。マーケットシェアも伸びなかったでしょう。マーケットシェアといっても,私が見ているのは,以前はいなかった何千人もの開発者の業界への参入で,当社がそれを可能にしているのです」

 「ゲーム業界人が何かを望むとしたら,それはゲーム業界に利益をもたらすために,収益の伸びを上回る投資を続けるということだと思います。長年そうしてきましたが,研究開発費を相殺するほど収益が成長し,損益分岐点に到達できる規模になりました」

 同氏は,投資家に対して,2023年に利益を計上する計画であると語っており,予想よりも早くその目標に達する可能性もあるという。

レイオフと自社株買い



 最後に,6月に発表された全社員の約4%,約200名のレイオフ(関連英文記事)について尋ねた。同氏はすぐに,これらの従業員には当社の他の求人に応募する機会が与えられ,その結果,影響を受けた従業員の4分の3が新たな立場で働き続けることになった,と指摘した。

 また,「やるべきことに集中するために,うまくいっていないプロジェクトをいくつか停止しました」と,今後のロードマップを示した一連のブログ(外部リンク)を紹介した。

 「リソースの配分を考えると,計画したことが100%うまくいかないということも起こりうるんです」と同氏はいう。「スキーにちょっと似ていますね。たまには転ばないと,新しいことに挑戦していないので上達しないのでしょう。当社が取り組んでいることの約4%は,当社が行くべきところに効果的に到達できていないと感じていました」

 また,Unityの平均勤続年数は6〜7年と,他のハイテク企業と比べてかなり低いとのことだ。

 「私はどの会社にも,すべてが機能しなければならず,仕事が終わってはならないという基準を課すつもりはありません」と,Riccitiello氏は語る。「それは連邦政府のようなもので,結局は肥大化しますが,巨大企業にはなりたくありません。私は,当社がシャープかつスマートに,顧客のためになることに集中することを望みます」

 レイオフを踏まえて,そのわずか1か月後にironSourceの買収にあわせて25億ドルの自社株買いを開始した判断についても尋ねた。

 Riccitiello氏は,この2つの行動は無関係であると強調する。

当社は大型合併を発表しました。当社が買収した会社は多額の現金を持っています。当社にも多額の現金があります。当社の株式が希薄化しないことを強く望んでいる投資家がいるのです。

 「当社は配置転換により1%をレイオフしました」と,同氏はいう。「特に不況に直面している際に,それが異常だと考えるのは,現実離れしているでしょう。現実には何千という企業が,顧客のため,そして率直に言って会社で働く人々のためにこのような調整をしているのです。だから私はそれが真実だと信じています」

 「2つ目の問題は,大型合併を発表したことです。当社が買収した会社は多額の現金を持っています。当社にも多額の現金があります。当社の株式が希薄化しないことを強く望んでいる投資家がいるのです。全株式の取引で,従業員が所有する株式は合併によって26.5%希釈されることになり,大きな問題です。当社は発行済み株式の大部分を買い戻すことができたので,20%台ではなく10%台の希薄化になっています」

 「当社が1%の雇用を削減したのは,損益計算をするためではありません。エネルギーを集中させるためです。多くの物事と同様に
,両親があなたに野菜を食べるようにいうのは,あなたを罰するためではありません。両親は,あなたがより良く,より栄養のある人間になるためにいうのです。これにはもう1つ,本当の話があります。とてもシンプルです。当社は顧客のニーズを満たすため,良い会社がすることをしたのです」

 同氏は続けた。「他の大企業と合併することは,常に希薄化するものです。その希薄化を最小限にしたいのは,Unity社員が全員株式を保有していることもあり,彼らが報酬制度を通じて付与された当社の株式への投資をより価値のあるものにし,今回行ったM&Aで希釈させたくないからなのです。はい,それらはすべて連綿と続いているのです。誤った理解やストーリーを見つけることはいつでも簡単です。世界はそういうもので溢れています」

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら

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