Pages

Saturday, December 31, 2022

スーパーファミコン音源をMIDIで鳴らせる「Super MIDI Pak」で ... - 4Gamer.net

tahupedascabe.blogspot.com  誰しも“思い出の音”というものがある。

 例えば幼い頃に車の中で聞いたカーステレオ、旅先で初めて見た滝の音、あるいは初デートで行った遊園地の音など……。

 多くのゲーム(サウンド)クリエイターにとって,子どもの頃にプレイしたゲームのサウンドはまさにその1つだろう。

 私・COSIOにとっては,ほぼ毎日のようにプレイしていたスーパーファミコン(以下,スーファミ)のゲームサウンドがまさにそれだ。そんな思い出のゲームサウンドを自分の手で自由に再現できるとしたら?

画像集 No.017のサムネイル画像 / スーパーファミコン音源をMIDIで鳴らせる「Super MIDI Pak」で,COSIOが“思い出のゲームサウンド”に挑む!

――2022年某日

早苗月 ハンバーグ食べ男(以下,食べ男):
 COSIOさん。最近,スーファミの音をMIDIで鳴らせるカートリッジが出たらしいっすよ。

COSIO
 そんなことできるわけがない。そもそも,この令和の時代にスーファミのソフトがリリースされるなんて……。

食べ男
 まあ「らしい」って言うか,もう届いてるんですけどね。

COSIO
 マジで!?!?

食べ男
 𝒎𝒚 𝒏𝒆𝒘 𝒈𝒆𝒂𝒓...するにも自分だと正直持て余すので,お貸ししましょうか? (ニヤピクキラーン)……記事を書いてくれるなら!

 そんなわけで夢のようなカートリッジ「Super MIDI Pak」がやってきたので,いろいろ試してみた!

画像集 No.018のサムネイル画像 / スーパーファミコン音源をMIDIで鳴らせる「Super MIDI Pak」で,COSIOが“思い出のゲームサウンド”に挑む!

 Super MIDI Pakは,この令和の時代にもかかわらずリリースされた,スーファミ(と海外版のSuper NES,およびAnalogue製の互換機・Super Nt)で動作するゲームソフト(?)のカートリッジだ。通常のカートリッジと違うのは,なんとUSB端子MIDI端子(ミニピン型)を備えており,そこからMIDI信号を送受信すること。そのMIDI信号のやりとりでスーファミに搭載されている音源チップ・SPC700をコントロールして演奏できる。
スーファミ基板上のSPC700
画像集 No.016のサムネイル画像 / スーパーファミコン音源をMIDIで鳴らせる「Super MIDI Pak」で,COSIOが“思い出のゲームサウンド”に挑む!
 SPC700についても軽く説明しておこう。音源としては8音ポリ(ポリフォニック)のPCM音源。ただしPCM音源ではあるが波形は内蔵されていないため,曲データとともに音源データ(=サンプル)も用意する必要がある。

 サンプルはサンプリング周波数32kHz・16Bitで,ADPCMの一種であるBRR圧縮(BRR=ビットレート削減の意。ここではスーファミの音源プロセッサに準じた形式を指す)にする必要がある。またサウンドRAMの容量は64KB(!)のため,一度に読み込むことができるサンプルの容量はなんと5秒程度。それでも当時としては画期的な音源だったようだ。

 余談だが,この音源チップの設計者は“PlayStationの生みの親”として有名な久夛良木 健氏。そのためPlayStationの音源チップ(SPU)は,このSPC700がベースになっているらしい。スーファミとPlayStationに,こんなつながりがあるとは……なんとも感慨深い。

 この画期的な音源チップ・SPC700については,人気音源チップのご多分に漏れず,有志によって解析やエミュレーションが行われており,検索すると様々なエミュレーター(プレイヤー)どころか,ソフト音源(VSTインストゥルメント)すら見つけることができる。

 一方では,SCP700そのものを駆動させ音を出す試みもされている(例えばG.I.M.I.C)が,音を鳴らすためにはスーファミ用の音源データ(SPCファイル)を用意する必要があり,素人にはなかなかハードルが高かった。

 話を戻すと,Super MIDI Pakでは,このような作成難度の高いSPCファイルを作らずとも,一般的に作成できるMIDIファイルもしくはMIDIキーボードがあればSPC700そのものを駆動できる! 何という夢のようなカートリッジ!(2回目)

 肝心のサンプルに関しても,専用ソフト(後述)によってこれまた一般的なWAVファイルから作成でき,SPC700に書き込むことができるという。スゴイ!(語彙欠損)

 ちなみにSPCファイルの読み込みにも対応しているので,何かの事情で“たまたまSPCファイルを持っているがSPC700でそれを鳴らすことが出来なかった”という人も夢が叶うぞ!

 その他の機能の詳細は公式サイトをチェックしてほしい。

なにはともあれセッティング


 さっそくセッティングしていこう。Super MIDI Pakのマニュアルはオンラインで公開されており,ここから読むことができる。海外製品(アメリカ製)のためマニュアルは英語で書かれているが,ブラウザなどの翻訳機能を使えばだいたいの部分は理解できるので,あまり英語を読めない人は活用してみよう。
画像集 No.009のサムネイル画像 / スーパーファミコン音源をMIDIで鳴らせる「Super MIDI Pak」で,COSIOが“思い出のゲームサウンド”に挑む!

 さて,セッティングに話を戻そう。

 まずはSuper MIDI Pakを実行するためのハードウェア,つまりスーファミがないと始まらない。これもカートリッジと一緒に渡された。

 映像はスーファミのマルチアウトから専用のケーブルで出力されるビデオ信号(黄色端子)を,こちらは知人から借りた変換機(スケーラー)「FRAMEMEISTER」を使いHDMIに変換。それをキャプチャユニットを通してPCのOBS Studioに表示させた。音声は,同じくマルチアウトから付属のケーブルで出力される音声信号(赤白端子)をオーディオインタフェースに入力する。

 なお,マニュアル内には音声信号をオーディオインタフェースにつないだ場合,ビデオ信号をTVにつなぐとグラウンドループノイズが発生するためビデオ信号は“接続するべきではない”という記述があるが,今回のセッティングではとくにノイズは発生しなかった。

 ただ映像に別の変換機(HYPERKIN製)を使用したケースでは,確かに音声にノイズが乗ってしまった。接続する機器との相性によるものかもしれないが,こういった理由で,音声をキレイに録音したいときは,場合にもよるが映像の出力を諦める必要がある。まあ,詳しくは後述するがSuper MIDI Pakの映像はオマケみたいなものなので,無くても使用には差し支えないとは思う。

 最後にPCからのMIDI信号をSuper MIDI Pakに送るためUSBケーブルを接続すれば,セッティング完了だ。

今回のセッティング。MIDIキーボードを使って音を出したかったので,普段の作業デスクにスペースを作ってスーファミとFRAMEMEISTERを配置したため,なかなかのギリギリ具合(笑)
画像集 No.010のサムネイル画像 / スーパーファミコン音源をMIDIで鳴らせる「Super MIDI Pak」で,COSIOが“思い出のゲームサウンド”に挑む!

とりあえず起動して音を出してみた


 セッティングが済んだのでスーファミの電源を入れて,ソフトを起動させてみた。
 Super MIDI Pakを起動するとまずタイトル画面が表示される。その画面でコントローラーの[Start]と[R]を同時に押すと,メニュー画面に遷移する。と言っても,メニュー画面で選択できるのは「Test Mode」と「Credit」の2項目だけだ。

 「Test Mode」ではコントローラーを使って簡易的に音を出せる。動画の通りキー配置が若干独特で慣れるのに苦労するが,簡単な曲なら演奏もできるぞ。なお[Select]+[R/L]ボタンで,鳴らす調の変更が可能だ。

MIDIキーボードで演奏してみた


 ここまでなら普通のスーファミ用ソフト(と言うにはシンプルすぎるが……笑)と同じだ。「Super MIDI Pak」が真価を発揮するのはここから。いよいよ外部からMIDI信号を送信して音を鳴らしてみよう。

 まずはMIDI信号を送るため,カートリッジとPCをUSB TypeA-Micro USBケーブルで接続する(Super MIDI Pakのパッケージには同梱されていないので,別途用意しよう)。PCと接続するとドライバは自動でインストールされる。

Windowsの場合,ドライバは自動でインストールされる。デバイスの名前は(まんまだが)「Super MIDI Pak」だ
画像集 No.008のサムネイル画像 / スーパーファミコン音源をMIDIで鳴らせる「Super MIDI Pak」で,COSIOが“思い出のゲームサウンド”に挑む!

 後はDAWなどを使って,MIDIキーボードの入力をそのままSuper MIDI Pakのポートへ出力すればOKだ。なお,MIDI端子をミニピン端子に変換するアダプタ(一例)を用意すれば,PCを介さずに直接MIDIキーボードからSuper MIDI Pakを鳴らすこともできるようだ。

DAWで鳴らしてみた


 MIDIキーボードで鳴らせるなら,当然DAWからシーケンサで鳴らしてみたくもなる。ただDAWでSuper MIDI Pakをプレイするためには少し工夫が必要だ。

 まずはSuper MIDI Pakをコントロールするためにブラウザを使ってWebアプリを立ち上げる。Webアプリはここからアクセス可能だ(ブラウザはChromeを推奨)。Webアプリを立ち上げると自動的にSuper MIDI Pakのポートが認識され,各種コントロールが可能になる。


Super MIDI PakをWebブラウザからコントロールするためのアプリ。スタンドアロンのソフトではなくブラウザ上のWebアプリなのが今っぽい
画像集 No.006のサムネイル画像 / スーパーファミコン音源をMIDIで鳴らせる「Super MIDI Pak」で,COSIOが“思い出のゲームサウンド”に挑む!

 この後,DAWを起動してSuper MIDI Pakポートを指定し,MIDIデータを送ればプレイできそう……な気がするが,実はそうはうまくはいかない。Windowsの場合,1つのポートを使用できるのは1つのアプリに限定されるため,(参考)このようにWebアプリでSuper MIDI Pakのポートを使ってしまうと,DAWからは使えなくなってしまうのだ。

 筆者もこの問題にぶち当たり半日ほどかけて試行錯誤した結果,なんとか無事にWebアプリを使用しつつDAWでSuper MIDI Pakを鳴らすことが出来たので,以下にその手順を紹介しよう。

 まずMIDIのデータをアプリ間で転送できるようにするための仮想MIDIデバイスソフト「loopMIDI」をインストールした。なお,場合によってはマシンの再起動が必要になる。

 次にいったんブラウザを閉じてWebアプリを終了する。その後DAWを起動し,使用するMIDIポートの設定を行う。このとき,Webアプリで使用するSuper MIDI PakのINポートとloopMIDIのOUTポートは使用しないように設定しよう

画像は筆者使用のCubase9.5。他のDAWを使う場合は,それぞれのマニュアルを参考に設定を行ってほしい
画像集 No.011のサムネイル画像 / スーパーファミコン音源をMIDIで鳴らせる「Super MIDI Pak」で,COSIOが“思い出のゲームサウンド”に挑む! 画像集 No.012のサムネイル画像 / スーパーファミコン音源をMIDIで鳴らせる「Super MIDI Pak」で,COSIOが“思い出のゲームサウンド”に挑む!

 DAWによっては入力されてきたMIDIデータのSynEx(システムエクスクルーシブ)データをフィルタリングするように設定されている場合がある。WebアプリはこのSynExデータを使ってSuper MIDI Pakをコントロールするので,フィルタの設定は解除しておこう。
Cubaseの場合,デフォルトではSynExにチェックが付いておりフィルタリングされてしまうため,チェックを外しておく
画像集 No.013のサムネイル画像 / スーパーファミコン音源をMIDIで鳴らせる「Super MIDI Pak」で,COSIOが“思い出のゲームサウンド”に挑む!

 次に,MIDIデータをプレイするトラックは,出力をSuper MIDI Pakのポートに指定する。
画像ではトラックの中身は空だが,実際にはプレイするMIDIデータがここに入る
画像集 No.014のサムネイル画像 / スーパーファミコン音源をMIDIで鳴らせる「Super MIDI Pak」で,COSIOが“思い出のゲームサウンド”に挑む!

 さらにWebアプリからのデータをSuper MIDI Pakに送るためのトラックを追加しよう。空のMIDIトラックを追加し,入力にloopMIDI,出力にSuper MIDI Pakを設定し,トラックをモニタリング(INからのデータが常にOUTに出力される)状態にすればOKだ。なお,チャンネルの設定がある場合はAllにしておくこと。
このトラックにはデータは何も入れず,常にモニタリング状態にしておこう
画像集 No.015のサムネイル画像 / スーパーファミコン音源をMIDIで鳴らせる「Super MIDI Pak」で,COSIOが“思い出のゲームサウンド”に挑む!

 ここまで設定できたら,先ほど閉じたブラウザを再び起動し,Super MIDI PakのWebアプリを起動しよう。ここで先ほどと異なりポートは以下のように設定する。
  • Input Port:Super MIDI Pak
  • Output Port:loopMIDI

 これでDAWからSuper MIDI Pakを鳴らすためのセッティングは完了だ。
ポートの設定が終われば,いよいよDAWを使ってのプレイができる!
画像集 No.007のサムネイル画像 / スーパーファミコン音源をMIDIで鳴らせる「Super MIDI Pak」で,COSIOが“思い出のゲームサウンド”に挑む!

じゃあ例の曲,行ってみましょう!


 Super MIDI PakにはデフォルトでGM(General MIDI)音源に準拠したサウンドが用意されている。とりあえず,それでゲーマーにとっておなじみの“あの曲”を演奏してみたぞ。

 まずはデフォルトのサウンドを読み込むためWebアプリで「Load Factory Setting On Synth」ボタンを押す。この時点でエラーが出た場合は接続がうまく行われていないので,上のセクションを参考にソフトのセッティングや起動順を確認しよう。

 そしてMIDIを読み込み,プログラム(音色)の設定をしたらプレイスタートだ!


 いかがだろうか?

 なんとなくスーファミの雰囲気は出ている気がするが……やはり自分が知っているスーファミの音はちょっと違う気がする。

 俺のスーファミの音はこんなんじゃない!

 スーファミよ! お前はもっとやれるはずだ!

もっと頑張ってみた


 そもそも音がアレな原因は,音源(サンプル)にあるのではないかと考えた。

 実際,デフォルトのサウンドでは100以上の音色に対応しているため,単純計算で1音色あたりの秒数は50msec(0.05秒)ほど。これでは音が薄くなってしまうのは当然だ。というわけで,使用する音色を絞り込み,自分でサンプルを用意することで,より高音質なスーファミっぽい音を目指してみたぞ。

 何はともあれ曲がなければ始まらないので,簡単な曲を作ってみた。僕のスーファミの青春といえば現スクウェア・エニックスの某RPG(FではなくSの方)なので,それっぽい曲だ。

 Super MIDI PakはMIDIに準拠しているため16チャンネル(パート)を使用できる。ただしSPC700の同時発音は最大で8つ。そのため同時に鳴る音が8音に収まるよう調整する必要がある。各パートはモノフォニック(1音のみ)にし,和音を使う場合はパートを分ける。また,各音の長さを調整して音が重ならないようにする。

 音を響かせたいときはパートディレイ(同じ音を,音量を下げつつ連続して鳴らすことで,ディレイっぽい効果を得る)を使う手法が有効だ。このあたりは,筆者が昔経験したフィーチャーフォンやニンテンドーDSでのサウンド開発の経験を活かすことができた。

 完成した楽曲は以下の画像の通り。

今回作ったオリジナル曲で,パート数は全部で10パートほど。“_D”と書いてあるトラックはパートディレイ用
画像集 No.023のサムネイル画像 / スーパーファミコン音源をMIDIで鳴らせる「Super MIDI Pak」で,COSIOが“思い出のゲームサウンド”に挑む!

 次に,この曲をSPC700で鳴らすための音源(サンプル)制作に移る。まずはそれぞれの音色を単音で再生し,それを録音(サンプリング)する。録音するデータの仕様はSPC700に合わせて,32KHz/16Bit・モノラルのWAVだ。
音色のサンプリングの様子。ループポイントを取るため,少し長めに録音するのがコツ
画像集 No.024のサムネイル画像 / スーパーファミコン音源をMIDIで鳴らせる「Super MIDI Pak」で,COSIOが“思い出のゲームサウンド”に挑む!

 SPC700で1音色に使用できるサンプルは1つのみ。仕様上,全オクターブを鳴らせることになっているが,現実的には原音の±1〜2オクターブくらいが実用に足る範囲だろう。それを超える場合は,音程によってパートを分割し,それぞれに別の音程のサンプルを用意した方がいい(今回は1サンプルで賄えたため,これはやっていない)。サンプルに使う音程は,そのパートで使う音程の中間くらいになるように選択しよう。

 この曲の音色は全部で8(楽音x5+リズムx3)なので,1つのサンプルに使える容量はだいたい0.6秒ぶん。まずはこれを頭に入れて,録音されたサンプルの長さを調整する。

 次に,楽曲で使う音の長さに足りない部分を補うため,ループの設定を行う。ループの設定の仕方にもいくつかコツがあるのだが,長くなってしまうので割愛する。

 ちなみに一般的なサンプラーと違い,WAVファイルに設定したループマーカーはSPC700では認識されないので,設定したループの時間は自分でメモしておこう。なおループの終端=WAVデータの終端となるため,ループエンドでWAVデータをカットしておく。

波形編集ソフト「SoundForge」でのループ設定の様子。画面下部のループスタートの時間を使う
画像集 No.025のサムネイル画像 / スーパーファミコン音源をMIDIで鳴らせる「Super MIDI Pak」で,COSIOが“思い出のゲームサウンド”に挑む!

 サンプルを用意できたら,これを先程のWebアプリで読み込もう。Webアプリ右枠の「Import Samples」ボタンから先程作ったサンプルのWAVを読み込むと,同じ枠に追加されていく。
サンプルを読み込んだ画面。ここではすでにループの設定と左画面への転送まで完了している。ところどころ番号に欠番があるのはサンプルを入れ替えたため
画像集 No.021のサムネイル画像 / スーパーファミコン音源をMIDIで鳴らせる「Super MIDI Pak」で,COSIOが“思い出のゲームサウンド”に挑む!

 このときループ指定するかを聞かれるので,ループ設定をしている場合はここで先述したループスタートの値を入力しよう。ただし筆者の場合,マニュアル通りにWAVの始点からの長さを指定したのにうまくいかず,副次的な方法である−(マイナス)の値によるWAV終端からの長さの指定を試してみたところ正常に処理された。なお,ループポイントの最小単位は0.5msecであることにも注意しておこう。
Webアプリ上でのループ設定の様子。+の値ではうまくいかなかったので−の値で指定した
画像集 No.026のサムネイル画像 / スーパーファミコン音源をMIDIで鳴らせる「Super MIDI Pak」で,COSIOが“思い出のゲームサウンド”に挑む!

 ループを設定したら,右枠のPreviewボタンを押してループ再生がうまくいってるか確認しよう。なお,BRR圧縮される関係でループ時にプチノイズが乗ってしまう場合は,ループポイントを少しずらしてノイズを軽減できるポイントを探ってみるといい。ループ設定をやり直す場合は,少し面倒だがいったん[X]ボタンでサンプルを削除してから,Import SamplesでWAVを読み込み直してループポイントを再設定する。

 サンプルの読み込みが終わったら,右枠のAdd Entire Catalogue to Sample Directoryボタンを押すとサンプルを左枠に転送できる。この左枠では,サンプルを鳴らすための設定を行っていく。

 各サンプルの横にあるPatch Settingボタンを押すと,サンプルのプロパティが設定できる。まず設定すべきなのは,サンプルの音程を指定するRoot Pitchだ。マニュアルではここに音程をfractional semitones(半音分数)で入力せよとあるが,要するにMIDIノートナンバーでOKだ(参考1参考2)。音階とMIDIノートナンバーの対応は,ここを参考にするとよいだろう。

サンプルのプロパティではRootPitchの他ボリュームやピッチエンベロープも設定できる。ただしリリースの設定はない(常に0)ので注意
画像集 No.020のサムネイル画像 / スーパーファミコン音源をMIDIで鳴らせる「Super MIDI Pak」で,COSIOが“思い出のゲームサウンド”に挑む!

 次に,各サンプルの番号部分のボタンを押すとSample#(番号)を設定(変更)できる。Drum Kit Modeで鳴らすサンプルには,この設定が必要となる。

 Drum Kit Modeとはその名前の通りドラムチャンネル用の設定だ。このモードでは,C1(ド)ならバスドラム,D1(レ)ならスネアといった具合に,MIDIの音程に対して個別のサンプルを再生させられる。各音程で再生するサンプルの指定は,音程に対応したMIDIノートナンバーに128を足した数をSample#に設定することで行う。今回,ドラムチャンネルでは次の音程とサンプルを使用したので,それぞれのSample#は以下のように設定した。

  • C1(MIDIノートナンバー24):BD(バスドラム) → Sample#152
  • C#1(MIDIノートナンバー25):SDRim(リムショット)→ Sample#153
  • F#1(MIDIノートナンバー30):HH(ハイハット)→ → Sample#158

 ここまで来たら,万が一を考えて設定を保存しておこう。設定の保存は画面右上のExport Sessionボタンを押すと行える。保存した設定を読み込みたい場合は,Import Sessionボタンを押そう。これで不意にブラウザがクラッシュしても安心だ。

 サンプルの設定が終わったら,画面左上にあるUpload Session to Synthボタンを押して,いよいよSuper MIDI Pakへ転送する。転送には多少時間がかかるが,転送中はカートリッジ内のLEDが点滅するのでうまく動いているかどうかはそこで確認しよう。転送が終われば,画面にアップロード完了のダイアログが表示される。

アップロード完了したら,カスタム音源でのSPC700の演奏までいよいよあと一歩だ!
画像集 No.022のサムネイル画像 / スーパーファミコン音源をMIDIで鳴らせる「Super MIDI Pak」で,COSIOが“思い出のゲームサウンド”に挑む!

 無事にSPC700にサンプルが転送できたら,最後に各チャンネルの設定を行う。これはWebアプリの左側にある「Channel (数字) Setting」のリンクをクリックすることで行える。主に設定をする場所は以下になるだろう。
  • Sample:該当チャンネルで鳴らすサンプルの指定
  • Volume:該当チャンネルの音量
  • Pan:該当チャンネルのパン
  • Vibrato Intensity;ビブラートの深さ
  • Vibrato Rate;ビブラートの周期
  • Portamento Time:ポルタメント(グライド)時間の設定
  • Portamento Enable:ポルタメント(グライド)を有効にするか

 ここで設定できる項目はMIDIのコントロールチェンジを使って設定を変更することも可能だ。筆者はWebアプリで設定を行ったが,MIDIファイルに設定を保存したい場合や,曲中でダイナミックに設定を変更したい場合は,コントロールチェンジを使用するのも良いだろう。設定値とコントロールチェンジの対応はマニュアルを参照のこと。
本文中で紹介した以外にも設定できるパラメータがある。興味のある人はマニュアルを参照してほしい
画像集 No.020のサムネイル画像 / スーパーファミコン音源をMIDIで鳴らせる「Super MIDI Pak」で,COSIOが“思い出のゲームサウンド”に挑む!

 なお,ここでのセッティングは即座にSPC700へ転送されるので,MIDIデータを再生しながら微調整を行うこともできる。Drum Kit Modeを使う場合は,Sampleを設定せずにDrum Kit Mode Enableにチェックを入れればOKだ。これで該当するチャンネルがDrum Kit Modeで演奏される。
ドラムチャンネルの設定。今回の曲ではチャンネル10をDrum Kit Modeとした
画像集 No.019のサムネイル画像 / スーパーファミコン音源をMIDIで鳴らせる「Super MIDI Pak」で,COSIOが“思い出のゲームサウンド”に挑む!

 これでいよいよ,MIDIでSPC700を演奏できる準備が整った。DAWからSuper MIDI PakポートにMIDIデータを送信してみよう。設定がうまくいっていれば,スーファミの出力から自分で作った音色で曲が演奏されるはずだ。なかなかの感動の瞬間だぞ!

 この後,MIDIデータを再生しながら各チャンネルの設定やサンプル,MIDIデータの微調整を行い,最終的に完成した曲がこちら。


 先ほどのデフォルト音源よりは,だいぶスーファミっぽい感じの曲になったのではないかと思うが……いかがだろうか? せっかくなので,実際にスーファミでのゲーム開発に携わってきた先輩方に感想を聞いてみた。
●なかやまらいでん氏
 前半は良いと思います。41secくらいでメロの音色が変わるのですが,そこへ入るところに軽くフィルがあっても良いなぁというのと,41sec以降はアルペジオとメロの音域が重なっちゃうので,例えばアルペジオのパートを4分刻みの高域ストリングスの刻みにしちゃうとか,バックのリズムもちょっと変えちゃうとか,変化させると良さそうです。スーファミの曲としては大丈夫だと思います。

●中潟憲雄氏
 雰囲気出てると思います(^^)
 ただ音色が洗練されているというか落ち着いてますね。当時はDX7やアカイのサンプラーあたりから波形抜いて音源揃えていたのでもっとギラギラしてたかな〜と思います。
 完成度は高いと思いますよ。


 とのことで,我ながら初めてSPC700を触ったにしてはそこそこそれっぽいものが出来上がったんじゃないかと思う。ただ,両氏の指摘にもあるようにまだまだブラッシュアップの余地はありそうだ。

 またまだ検証できてないSPC700の機能もたくさんあるので,今後も引き続きSuper MIDI Pakを掘り下げてよりクオリティの高い曲の制作をしていきたいと思う。

 目指せ! スクエニ! 目指せFF!!

Adblock test (Why?)


からの記事と詳細 ( スーパーファミコン音源をMIDIで鳴らせる「Super MIDI Pak」で ... - 4Gamer.net )
https://ift.tt/uJS8wlZ

撮りたいオトコと話したいオンナ~マン・レイと女性たち|夜の ... - 幻冬舎plus

tahupedascabe.blogspot.com

コーヒーを飲みに入っても寿司を食べに入っても真剣な顔で画角や照明を気にしているインスタ蝿ちゃんたちの姿もそれほど気にならなくなってきた(飲食店での批判などが一周してある程度写真リテラシー的なものが浸透したというのと、見慣れたというのと多分半々だ)昨今、少なくとも私が好きな二重の幅が広くて向上心と自己肯定感が強い女子たちに人気の被写体はというと食べ物や買った高い靴や花火など色々あるけど、やはり自分自身だと思う。

 

電車でかわいい若い女子のスマホ画面を盗み見る悪趣味な私の目に映るのは、同じ画角同じ照明で何度も撮り重ねられた自撮りの数々で、そこにはプロのグラビアカメラマンのデータと同じように数ミリの差しかないものをいくつも並べ、奇跡を待った形跡が意地らしく見える。そしてフィルタやアプリは奇跡をものすごく起きやすくしているので、割とだれの手元にも奇跡が舞い降りるこの世の中は概ね幸福で溢れていると思う。

このとき彼女たちは写真家であり被写体でもある。セルフ・ポートレイトとか自画像なんていうのは展覧会に行くと大抵最初の方に出てくるし、北野武映画は武の自撮りっぽいものもあるし、日本には私小説なんていう上目遣いぷっくり唇の自撮りレベルに破廉恥なジャンルもあるし、表現する者がモデルに自分自身を選ぶことはそんなに珍しいことではない。そして彼女らの作品がある種の芸術的な奇跡を起こしているのも疑いようがない。ここで気になるのは、意識として、アーティストとモデルのどちらにより近いかということだ。

100枚近く並べられたミリ単位でしか差異のない写真を吟味する様子は、うちの地元のやる気のない写真館のおじさんよりよほど写真家っぽい。しかし例えば後ろのガラスに映ったカラスの影と反射する光が奇跡を起こしていても、自分の表情が魔法にかけられていない場合、その写真が地中深く葬られることも我々は知っている。しかし人に写真を撮ってもらうことを拒絶し、頑なに自撮りしか許さない様子などを見ると、このミューズの魅力を一番に引き出せるのはこの俺だけだと宣う芸術家が顔を出す。しかし生々しい現実とは遠く離れたとしても、サーモグラフィくらい離れちゃうと途端に情熱がなくなり、本人であるとわかるギリギリのラインを超えないあたりは自己アピール的でもある。しかし。

ブログが流行した頃、人々はこんなにも文章を書きたかったのか、と思い、インスタが流行した頃、人々はこんなにも写真を撮りたかったのか、と思ったけど、表現欲求と同じくらい被写欲求というか露出欲求というかモデル願望も強いんだなぁと、人々のブログやインスタを見返しながら思う。気持ちはよくわかる。女の子ってかわいいし、自分が一番かわいいし、さらにかわいくなれる技術は日々進化しているわけですし。

モデルというと私は竹久夢二に「お葉」として愛され、伊藤晴雨や藤島武二とジャンルのかけ離れた画家のモデルも務めた佐々木カ子ヨみたいに、刹那的で破滅的で多淫、男を惑わしコケにする、みたいな印象(というか偏見)があるのだけど、夢二がめちゃくちゃお葉に悩まされ、しかし長く執着していたように、芸術家とモデルの間の愛憎入り混じった感情みたいなものが、自撮り女子の中ではどう回転しているのかも興味はある。

もう一人、私がモデルとしてイメージするのは藤田嗣治やキスリングが描き、マン・レイのポートレイト写真の中でも最も存在感のある「モンパルナスのキキ」ことアリス・プランだった。この人もまた男悩ませ隊の隊員で、全体的に自由奔放な生活で長年恋人だったマン・レイを悩ませた上に新聞記者と駆け落ちするわアルコール依存だわ最後には麻薬の売買で逮捕までされている。多くがとても短い若い期間に、写真であれば0・何秒みたいなレベルの、ほんの一瞬の奇跡を放つことが求められるモデルが、人生全体を構築するみたいな考えと無縁なのはある種必然のような気もするけど、やっぱり写真家が夢中で撮り続ける被写体は、把握できてしまうような者ではないことが重要なのだろう。

マン・レイの作品を、彼が残した女性像を主軸に集めた展覧会「マン・レイと女性たち」は、現在葉山の近美で開かれているのだけど、私は昨年はたまたま誕生日の週に友人のシャンソン歌手と渋谷で昼食をとったついでに「近くでマン・レイ展やってるっぽいから誕生日プレゼントに奢るよ」と言われてBunkamuraで、最近はたまたま葉山に向かった道中で近美の展覧会情報で見て、2回見に行くことになった。

やはり目につくのも、作品前に人が溜まっているのも「アングルのヴァイオリン」のようなキキを写した作品で、その後の愛人兼助手だった後の報道カメラマンのリー・ミラーの作品もコーナーができるくらいには人気があるのだけど、やっぱり写真家の助手としてやってきて優れた写真技術で自立していく優秀なミラーでは、精神的にも肉体的にもヤリマンっぽいキキに比べてマン・レイが理解し過ぎるのか、いまいち影が薄いような気もする。シャネルを撮った写真はシャネル本の表紙になりがちな大変な秀作だと思うけど、やっぱりココが彼の想像範囲に収まらない奇人だったということなんだろうか。

私の持論で、女も男のことは全然理解してないと思うけど、それでもなお男の、女についてあまりに何もわかっていないっぷり、題して「坊や、一体何を教わってきたの~ポカーン編~」が抜きん出ているのは、女が知を結集する女子会を頻繁に開くのに対して、男が男子会的な場をあまり持っておらず、つまり一人の持つ知見が広まって蓄積し、血と涙の「べからず集」や「類型図鑑」が編纂されない、という事情によるのだけど、その代わり、男は女という物体を冷笑的にそういった本に編集していくよりも、神秘的なままに描き、書き、写してきたとも言える。

そう考えると下手に知を蓄積させ、やや賢くなってしまった女では、「ヴェールをかぶったキキ」のような奇跡を写せないかもしれないなぁとも思う。ちなみにマン・レイ氏は男も写しているし、デュシャンやダリやルイス・ブニュエルなど、立ち現れるのは錚々たるあの時代の人々なのだけど、どうも男は写真家がマン・レイで被写体がジャン・コクトーだとしてもかなり明瞭な出来になってしまうので、顔を把握するためにはありがたいけど何の奇跡も起こっている様子がなく、要はあまり面白くない。

それにしても、妻や恋人をモデルにする人は多く、それはモデルとした人を後に愛す場合もあれば、明治初期の日本の西洋画家たちのように、裸体モデルなんてやってくれる人がいなかったがために妻に頼むしかなかったみたいな場合もあるのだろうけど、自分を手ひどく振った恋人がモデルの作品が代表作となって、展覧会のたびにそのポスターになってたら嫌だとかはないのだろうか。そしてその後の恋人や妻の心境やいかに。

シンガーソングライターなんて、前の恋人を狂おしいほど愛していた時に描いた歌がメガヒットしちゃったら、ずっとそれ歌わなきゃファンは喜ばないみたいな状況はよくありそうだけど。トム・ヨークが「Creep」を歌わされるの嫌がってるのは、ヒット曲にしか興味を示さない大衆への絶望なんかより、そんな事情の方が強いんじゃないかと私は踏んでる。

まぁでも花房先生の本(京都に女王と呼ばれた作家がいた)を読むと山村美紗の夫は美紗の死後、後妻と仲良く暮らしながら美紗の絵を描き続けたという話だから、それに比べると主に写真のモデルだったキキの作品が作品として残っているだけというマン・レイおよび彼の後の恋人たちの方がマシかも。描くことと写すことの一番の違いは、記憶は描けても写すことができないことだろうな。

ちなみに昔、クリスマスの翌日に彼氏の家で目覚めた友人から電話がかかってきて、けたたましい音で鳴ったガラケーよりさらにけたたましい取り乱した声で「彼のデスクから半裸のパイ出し女の写真が出てきた」という報告だった。多分前の妻の写真なのだけど、その写真を盗んできた彼女が、マジックで髭やら鼻毛やら乳首毛やらを描いてストレス発散をしていたのが、ちょうど10年ほど前の大晦日の記憶。昔の恋人の写真なんかはきちんと廃棄しておきましょーね。
 

Adblock test (Why?)


からの記事と詳細 ( 撮りたいオトコと話したいオンナ~マン・レイと女性たち|夜の ... - 幻冬舎plus )
https://ift.tt/ZaTsObz

Friday, December 30, 2022

CVや売上UPにつながるメルマガ配信の裏話。「実は知らないメール ... - 愛媛新聞

tahupedascabe.blogspot.com

CVや売上UPにつながるメルマガ配信の裏話。「実は知らないメールマーケの盲点」

CVや売上UPにつながるメルマガ配信の裏話。「実は知らないメールマーケの盲点」

お得なキャンペーンやセミナーのお知らせ、最新ニュースなど、ローコストで情報発信できるメルマガは、企業とお客さまをつなぐ重要なコミュニケーションツールです。メルマガ担当者は、お客さまにメルマガを開封してもらい、アクションを起こしてもらうためにどんなメルマガを送ったらいいのか、日々頭を悩ませているのではないでしょうか。今回、メールの到達率を改善するメールリレーサービス 「ベアメール」を提供する株式会社リンクのメルマガ担当者4名が、効果を上げるためにしている工夫や、メールをしっかり届けるための苦労などについて語り合いました。そこで本記事では、対談の内容を抜粋してお届けいたします。(LINK Watch!編集部)

お客さまに“読まれる”メルマガの極意とは

―メルマガ担当としてみなさんが、普段どのような商材のメールを送っているのか教えてください。

三浦:クラウド型電話サービス「BIZTEL」のマーケティング担当をしています。メールマーケティングや、セミナーの企画・開催が主な業務になります。前職ではB to Cの出版社に勤めていまして、そこでもメルマガを担当していたので、かれこれ8年ほどメールマーケティングに携わっていることになります。

小宮山:クレジットカード業界のセキュリティ基準に準拠するためのサービスを扱っているセキュリティプラットフォーム事業部で営業をしています。前職でインターネット広告の営業やマーケティングをしていたこともあって、今も営業をしながらメールマーケティングに携わっています。月に1回、セミナーや新しい事例記事の紹介などを送っています。

市田:私は「ベアメール」というクラウド型メールリレーサービスのインサイドセールスを担当しています。ベアメールにお問い合わせいただいたお客さまと電話やWebで商談をし、トライアルや受注につなげていくという活動をしています。今年に入ってからメルマガの担当となり、毎月1回ほど配信をしている状況です。

竹本:私もベアメールのインサイドセールスを担当していて、市田に引き継ぐ前はメルマガを配信していました。今はホームページに掲載している導入事例取材などを担当しています。

(左から)参加した三浦・小宮山・竹本・市田

―メルマガを書くときに心がけていることはありますか?

三浦:“売り込み感を出さない” “営業色を出さない” ということを一番大切にしています。もちろん商品は売りたいのですが、お客さまに「営業をかけている」という印象を抱かせてしまうと、身構えられたり、ストレスを感じさせたりしてしまいます。すると、二度とメールを開かないようにしようとか、購読を解除しようといった反応につながりかねません。「ぜひ資料をダウンロードしてください」「ぜひお買い求めください」などとお願いするようなことを書いても、効果は出にくいと思います。その人の心に響く内容を伝えられれば、もっと詳しく知りたくなってURLをクリックしてもらえたり、購入してもらえたりするものだと思うので、お客さまの自発的な行動を引き出せるように心を砕いています。売り込まない、でも、欲しくさせることが重要だと感じています。

小宮山:私が心がけていることは3つあります。1つ目は、メールの送り先は名刺交換をしているかセミナーに来てくれた人になるので、営業担当者の名前を入れることです。2つ目は、文章はなるべく読みやすくシンプルに、1回のメールでポイントは一つに絞ること。3つ目は、詳しい内容はWebに掲載しているので、Webへ誘導するリンクをメールの上部と下部に入れるということです。毎回このポイントは必ず守るようにしています。

市田:私も、三浦さんが言っているように、メルマガは売り込みではなく、ユーザーのためになる情報を伝えるコンテンツというのが前提としてあります。メルマガで紹介する事例記事やブログ記事は、お客さまがどんなことに困っているのか、どんなことに関心があるのかをインサイドセールスとマーケティングのチームで話し合った上で作っているので、多くのお客さまに興味を持っていただける内容になっていると思います。

竹本:私がメルマガを担当していた頃は試行錯誤の段階で、メールに関連するニュースなどをまとめたものをお届けしていたんです。でも、あまりお客さまからの反響がなかったので、それだったら自社のWebサイトにお客さまの声を反映したコンテンツを作って、そこに誘導した方がいいよねということで今の形になりました。詳しい内容はWebで見てもらうので、メルマガは短い文章で簡潔に伝えるようにしていました。

三浦:小宮山さんが言っていたように、読みやすさっていうのはすごく大切ですね。文章を読むのが得意な人もいれば、苦手な人も当然います。たくさん文字が詰まっているとそれだけで読まないという人もいるので、文章を短くする、なるべく簡単な言葉を使う、フォントの色を変えたり太くしたりするなど、メールを開いたときに読んでみようと思わせる工夫も必要です。

これは以前、出版社にいたときの話なんですが、1つの文章が終わった後に入れていた空行を、1行から2行に変えたところ、それだけでクリック率が向上して売り上げが伸びた事例がありました。ちょっとした改善であっても、読みやすさを突き詰めることでその先のコンバージョンや売り上げにつながることがあるので、いろいろと試してみるのもいいですね。

竹本:でも、改行多くするとメールが長くなっちゃいますよね。そこはどうしているんですか?

三浦:確かに、本文はその分長くなってしまいますね。ただ、B to Cの場合だと、読者は趣味のためにあてられる時間に、興味のある内容のメルマガを読んでいるわけですので、少々長くなっても読んでもらえますし、本文中に所々URLへの誘導をはさめばクリック率にも影響はしないと思います。

逆にB to Bは長いと読むのをすぐにやめてしまう傾向が強いように感じています。なので、改行を増やしている分、文字数をめちゃくちゃ削っています。これまでの経験から、1つのコンテンツを紹介する文字数は140文字以内に収められるとクリック率が良いですね。Twitterがちょうど140文字なので、Twitterの投稿欄をメルマガの下書きに使って調整したりしています。ここはアピールしたい部分だから入れたいな、というものも泣く泣く削って、最後に残った厳選した要素だけを文章にして送っています。

メールを確実に届けるための工夫

―メールの内容以外で気をつけているポイントを教えてください。

三浦:メールを送る時間は気にしています。メールを開く時間はB to CとB to Bで大きく違っていて、B to Cのお客さんはちょっとした隙間時間、通勤中や昼休み、夜のくつろぎの時間帯といった、いわゆる自分のための時間にメールを読むので、開封してもらえるタイミングが多いんです。ですからB to Cのメルマガを送っていたときは、時間帯をそこまで意識していませんでした。

一方、B to Bのお客さまは基本的に業務時間内しかメールをチェックしないので、その中で送ることがマストです。当然、業務時間内は忙しいですから、そのメールが自分の業務と関係があるかないかで仕分けされます。そういう意味でも、B to Bのメルマガは短い文面ですぐ理解でき、クリックしたくなるように書くことが大切だと思います。

市田:ベアメール担当としてこだわっているのは、“到達率”を保つことです。メルマガ担当者の方は開封率やクリック率というのは気にされるんですが、メールの到達率を意識している方はまだまだ少ない印象です。メールは送ったら必ず届くというのは実は大きな間違いで、受信側のセキュリティでブロックされてしまったり、迷惑メールフォルダに振り分けられてしまっていたりと、お客さまの目に触れないということがよくあります。ほかの3人も使っていますが、リンクではメルマガの配信をする前に、必ず「迷惑メールスコアリング」で診断をして、問題がないことを確認しています。

三浦:お客さまにメールを開いてもらうために件名を工夫したり、Webサイトに誘導するために言い回しにこだわりすぎたりすると、意図せずスパムっぽい表現になってしまっていることがあって、そうすると迷惑メールとして判定される可能性が高くなるんですよね。

市田:そうですね。迷惑メールと判断されるような言葉を使っていたり、メールに貼ったURLに問題があったり、開くまでに時間がかかるものが入っていると、迷惑メールと判断されてブロックされてしまうこともあります。

小宮山:“迷惑メールとして振り分けられてしまう可能性があるもの”を事前に見極められるというのは大変ありがたいですよね。

三浦:B to Cでネットショップをやっている会社の場合、メールマーケティングで売り上げを作っているケースってかなりあると思うので、そうした方々にとってメルマガが届かないというのは死活問題だと思います。会社の売上に直結するからと一生懸命魅力的な文面を書いたのに、それが迷惑メールに振り分けられて読まれないことになったら……。我々のようなB to Bのメルマガ担当者ももちろん頑張らないといけないんですけど、特にB to Cの人たちにこそ、迷惑メールに振り分けられないか事前にチェックできる「迷惑メールスコアリング」を使ってほしいですよね。携帯にメールを送るとdocomoは届いてauには届かないというような問題があるんですけど、これもチェックできるんですよね? 

竹本:メールの受信側は、さまざまな項目をチェックして、トータルスコアで受け取る・受け取らないという判断をしています。「迷惑メールスコアリング」はトータルスコアと、項目ごとの問題点が分かるので、改善すべき点が一目で分かります。さらにメールをブロックするキャリア独自のブラックリストがあるので、そこに引っかかるかどうかもチェックできます。B to Cの場合、携帯メールやGmailなどのメールサービスを利用しているお客さまが多いので、「迷惑メールスコアリング」の重要性は私たちより高いかもしれません。

小宮山:チェックが簡単なのもすごく便利ですよね。指定された判定用のメールアドレスにテストメールを送るだけで判定してもらえる。テストメールを送るのは2秒もあればできちゃいます。それだけでメールが届くか届かないかを診断してもらえるので、ストレスなく使えます。

竹本:メルマガだったら、必ずテスト配信しますよね。その時に一緒に送ってもらうのが一番簡単だと思います。件名に“無料キャンペーン”と入れたら到達率が下がったとか、コロナ禍でコロナ詐欺といった事象が増えると“コロナ”という言葉を入れたら迷惑メール判定にされたなど、メールのフィルタリングは日々厳しくなっています。そうした最新情報も含めて自分たちで調べて対応するのは無理ですよね。それを簡単にチェックできるのはとても便利なツールだと思います。

メルマガは届かないからといってお客さまが連絡をくれるものではないので、開封率が急激に下がるといった動きがないと気がつきません。でも、そこで気づいたときにはもう手遅れだったりするので、「迷惑メールスコアリング」のようなもので日頃からチェックしておくと良いと思います。

メルマガをさらにワンランクアップさせるために

―最近はSNSやLINEなどを使ったマーケティングが人気になりつつあります。メルマガは今後どうなっていくと思いますか?

小宮山:B to Bの場合は、ある程度時間をかけて1to1のようなコミュニケーションを重ねていって、顧客との関係性を熟成させることが大事だと思うので、SNSは今のところ使っていません。これからもメルマガが主流であるかなと思っています。特にコロナ禍で対面の営業がしにくい状況がまだ続くことを考えると、メルマガなしでは成り立たないところもあります。

三浦:B to B事業者のSNSの運用はなかなか難しいと感じています。というのも、多くの方にとってSNSはくつろぎの時間に見るものだと思うので、業務に直結するコンテンツを読んだり、資料をダウンロードしたりというのは、そうした時間にはあまりやらないですよね。

結局、リードのデータの活用方法は大きく4つしかないんです。訪問する、電話をかける、メールを送る、郵送物を送る。この4パターンなんですけど、コストがかからず、かつ一度に大勢の人にコミュニケーションが取れるという点で、メルマガはかなり有効な手段だと思います。

竹本:実際に私が対応しているお客さまの中でもB to C向けの商材を扱っている方は、SNSやLINEにシフトしているという声をよく聞きます。でも、いろいろと時代が変わっていく中でも、メールのコミュニケーションは変わらず、残り続けていますよね。メールというツールが昔からあるから時代遅れみたいに思われがちなだけであって、結局のところメールはこれからも大切なコミュニケーションツールとして残るでしょうし、メルマガの重要性も変わらないと考えています。

―まだまだメルマガはマーケティングにおいて重要ということですね。みなさんがメルマガを担当していて楽しいのはどんなときですか?

三浦:やっぱりお客さまの反応がいいときですね。メルマガでセミナーの案内をしたときに、申し込みがあったことを通知するメールで自分の受信トレイが一杯になったのを見るのは、めちゃくちゃ気持ちいいです!

小宮山:すごく悩みながら文面を作り、送るまでも不安で、大丈夫かなと常に思っているので、数字が想定以上によかったときは嬉しいですね。そこでひと安心しつつ、じゃあ次はどうしようかなとまた前向きに考えています!

市田:お客さまと電話でお話ししたときに、「メルマガで紹介されていたあの記事読んだよ」とか感想を聞けたときは嬉しかったですね。メルマガから商談につなげていけたらもっと嬉しいので、今後はそこを頑張っていきたいです。

竹本:反応っていうところでは、やはりインサイドセールスが一番実感できるポジションですし、そこから関係性を密に築きながら商談まで進められるのは本当に嬉しいです。私が担当していたときはメルマガの差出人に自分の名前を入れて発信していたのですが、そうすると「あの竹本さんね」と、電話をした際にお声かけくださることがあって、それも嬉しかったですね。

―メルマガからいろいろなコミュニケーションが生まれているんですね。最後に、悩んでいるメルマガ担当の方にアドバイスをお願いします。

三浦:メルマガも人同士のコミュニケーションですので、こちらの一方的な都合で情報を伝えていると思われてしまうような、お客さまと健全な関係を築くのは難しいかもしれません。配信先に含まれているお客さまの顔を具体的に思い浮かべて、どんな言葉なら興味を示してもらえるのか想像し、その人に話しかけることをイメージしながら文章を考えると、お客さまの反応もどんどん良くなってくると思います。

小宮山:メールはこれからもとても重要な存在であると思います。内容はもちろん大事ですが、まずは確実に届けるということが大切なので、「迷惑メールスコアリング」でしっかり事前の準備をして、多くのお客さまにメールを届けてほしいですね。

市田:メルマガが届かないというのはやっぱりもったいないですよね。きちんと対策をすれば到達率は改善する手段があるので、ちゃんと対策をした上で、安心してメルマガを送ってほしいです。

竹本:時間をかけて一つひとつのメールを作っていると思うので、そのメールが届いているかというところも気にしていただきたいなと思います。メールの送信方法や設定だけでなく、文章の表現や、最近はフィッシングメールが流行っているのでURLが安全でちゃんと開くかどうかなど、迷惑メールにならないためのチェックはキリがありません。それをメルマガ担当がすべて確認するのは現実的ではないと思うので、「迷惑メールスコアリング」なども活用していただき、皆さんの大切なメールが確実に届くようになればと願っています。



株式会社リンク

BIZTEL事業部 事業企画グループ マーケティングチーム

三浦康平

前職の出版社ではメールマーケティングを活用し、ビジネス層向けのオンラインスクール・DVD教材を販売。株式会社リンクに入社後、国内トップシェアのクラウド型コールセンターシステム「BIZTEL」、クラウド型 教育管理サービス「BIZTEL shouin」を担当し、メールマーケティングやセミナーの企画・運営等を通じて、認知拡大と見込み客との接点作りに努めている。

株式会社リンク

セキュリティプラットフォーム事業部

小宮山一登

インターネット広告の企画立案、営業全般の経験を経て株式会社リンクにジョインし、マーケティングやクレジットカードセキュリティに関する営業に従事。クレジットカードセキュリティを50社超に導入、その他各パートナー企業とのアライアンスを構築しながら営業全般を行う。

株式会社リンク

クラウド・ホスティング事業部 サービス企画部 インサイドセールスチーム

竹本宏美

2019年に株式会社リンクに入社。メールの到達率改善に特化した「ベアメール」のインサイドセールスとして、クラウド・ホスティング事業部サービス企画部に所属。現在はサービス導入後のカスタマーサクセスも兼任し、ユーザとコミュニケーションをとりながらアフターフォローを実施し、顧客満足度向上に努める。

株式会社リンク

クラウド・ホスティング事業部 サービス企画部 インサイドセールスチーム

市田悠子

2021年に株式会社リンクに入社し、クラウド・ホスティング事業部サービス企画部に所属。メールの到達率を改善するためのサービス「ベアメール」のインサイドセールスとして、ユーザの課題をヒアリングしながら、導入・運用の支援を行う。メルマガ配信業務も担当。

行動者ストーリー詳細へ
PR TIMES STORYトップへ

Adblock test (Why?)


からの記事と詳細 ( CVや売上UPにつながるメルマガ配信の裏話。「実は知らないメール ... - 愛媛新聞 )
https://ift.tt/SUanehf

Wednesday, December 28, 2022

実家で生活しつつ仕事をこなすため、ドコモのホームルーター「home 5G HR01」を導入した - PC Watch

tahupedascabe.blogspot.com

「買い物山脈」は、編集部員やライター氏などが実際に購入したもの、使ってみたものについて、語るコーナーです

NTTドコモ「home 5G HR01」

 現在筆者は、とある事情から2022年6月より東京の自宅を離れ、香川県の実家で生活している。それ以降は主に実家で仕事をしているが、それにともなって問題となったのがネット環境だった。最終的に選択したのは、NTTドコモの「home 5G HR01」だったが、その経緯を紹介しようと思う。

楽天モバイルのモバイルルーターでは厳しい部分が

 もともと実家では、ネット環境としてYahoo! BBのADSLサービスを長年利用していた。筆者も実家に帰省したときに使っていたものの、その頻度は年に1~2度程度。また、実家で生活している両親はPCやスマートフォンを使っておらず、タブレットでネットにアクセスする程度で、1カ月のデータ利用量が1GBを超えることはほぼなかった。

 そこで、通信コストを見直すために、5年ほど前にADSLを解約し、筆者の手持ちで使っていなかったモバイルWi-Fiルーターに、UQモバイルの「データ高速プラン」を契約したSIMを付けて利用してもらっていた。

 UQモバイルのデータ高速プランは、月額基本料金が1,078円で、データ利用量3GBまでは最大225Mbpsの速度が出る。3GBを超えると200kbpsでデータ通信が利用できるというプランだった。実際に実家に設置して使ってみると、たまにYouTubeをたくさん利用した月で3GBを超えることもあったが、やはり多くの月で1GBを超えることはなかった。

 さらに、楽天モバイルが登場してからは、データ利用量が1GB以下の場合に月額料金が0円になるということと、同時にモバイルルーター「WiFi Pocket 2B」も実質無料で入手できるということで、そちらを購入し、UQモバイルを利用したモバイルルーターと入れ替えて利用していた。

 それ以降も、たまにデータ利用量が1GBを超えることはあったものの、多くの月が1GB以下で推移したこともあって、実家のデータ通信コストはかなり削減できていた。

 ただ、筆者が実家で生活するようになった6月以降は、筆者が仕事などでデータ通信を多く利用するようになり、データ通信量はほぼ数日で20GBを超えるようになった。それでも、楽天モバイルの料金プランは、2022年7月1日より導入された新料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VII」も含め、データ通信量が20GB以上でも3,278円で無制限に利用できるため、料金を気にすることなくデータ通信を利用できていた。

 データ通信速度は、受信が20~30Mbps程度、送信が40Mbps程度と、ADSLや光回線に比べると遅いものの、リモート会議などにもほぼ支障なく利用でき、そこそこ満足できるものであった。

両親がタブレットでネットアクセスを行なうために実家に置いていた、楽天モバイルのモバイルルーター「WiFi Pocket 2B」
実家で楽天モバイルのモバイルルーターを利用し始めた当初は、データ通信量が3GB以下の場合には料金が0円だったが、筆者が実家で生活するようになってからは20GBを下回ることはなくなった。それでも3,278円で無制限に利用できるのはありがたかった
WiFi Picket B2を利用した場合のデータ通信速度は、受信が20~30Mbps程度、送信が40Mbps程度。高速というわけではないが、リモート会議なども問題なく行なえていた

 ただ、実家で仕事を進めるうえでWiFi Pocket 2Bでは問題となる部分がいくつか見えてきた。

 1つが、そのままでは有線LANが利用できないという点だ。筆者の仕事では、デスクトップPCを使う場面が頻繁にあるため、仕事に支障をきたす場面も出てき始めた。

 もう1つが、ルーターへの接続台数だ。WiFi Pocket 2BのWi-Fi最大接続台数は16台。筆者は普段から、ノートPCを2台、Chromebook、スマートフォンを4台と計7台ほどの機器をWi-Fiに接続して利用している。そのうえ、レビューなどで利用するノートPCやタブレット、スマートフォンなどがあると、総接続台数が16台を簡単に超えてしまう。そこで、この点は早急に改善する必要があったわけだ。

 このほかに、WiFi Pocket 2Bの無線LANは、Wi-Fi 4(IEEE 802.11b/g/n)の2.4GHz帯域しかサポートしていないという点も、心許ないものとなっていた。

 というわけで、7月頃から実家の通信環境を刷新すべく調査を開始したのだった。

WiFi Picket B2の仕様。WANが4G対応となるのはしかたがないが、無線LANがIEEE 802.11b/g/nの2.4GHz帯域のみで、同時接続数は最大16台、有線LANも使えないため、仕事で利用するには心許ない

コスト的に有利なNTTドコモの「home 5G」を選択

 まず最初に検討したのが、楽天モバイルのSIMをそのまま利用しつつ、ルーターを5G対応のものに変更するというものだった。しかし、残念ながら実家は楽天モバイルの5Gエリアに入っておらず、早々に断念。

 次に検討したのが、光回線の導入だ。おそらく、速度はもちろん、使い方を考えても、光回線の導入がベストだったとは思う。コスト的にも、光コラボレーションモデルを活用すれば、楽天モバイル利用時よりはやや高くなるものの、大幅なコスト上昇にはならないことも確認していた。

 ただ、検討していた当時は、実家での生活が長期になるとは想定していなかったことや、楽天モバイルのようにデータ通信量が少なければ基本料金が安くなるということもないため、筆者がいなくなったあとは無駄にコストがかかることになる、と考えて光回線の導入には踏み切れなかった。

筆者の実家は、残念ながら楽天モバイルの5Gエリアに入っていないため、5G対応ルーターへの交換は断念

 ということで白羽の矢が立ったのが、携帯通信事業者が提供している5G対応のホームルーターだ。

 NTTドコモ、au、ソフトバンク、UQ WiMAXなど、通信事業者の多くが5G対応のホームルーターを提供している。また実家は、NTTドコモ、au、ソフトバンクともに5Gエリア内であることを確認済みだ。加えて、各社のホームルーターはいずれも無線LANがWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)に対応し、有線LANポートも備えているため、デスクトップPCなどの接続も問題ない。同時接続台数も、少ないもので32台、多いものでは128台となっており、十分な数字だ。

 そのため、当初はどれを導入するかかなり迷ったのも事実だ。しかし、最終的にはNTTドコモの「home 5G HR01」(以下、HR01)を選択することにした。

各社の5G対応ホームルーターを比較検討し、最終的に選択したのがNTTドコモの「home 5G HR01」だった

 HR01に決めた理由はいくつかある。まず1つが、手持ちのドコモSIMを装着したスマートフォンで受信300Mbps以上の速度が確認できていた、というものだ。筆者が利用するSIMは、NTTドコモ、楽天モバイル、LINEMOの3キャリアで、実家で5Gの速度を確認できるのはNTTドコモとソフトバンクのみだった。そして、LINEMOでも速度を計測したところ、NTTドコモに比べてかなり速度が遅かったのだ。

 auについては事前に速度を計測できていなかったが、NTTドコモでは受信で300Mbps以上の速度が得られると分かっていたのはかなり大きい。

 同時接続台数は64台。これも十分な数字で、筆者が仕事で多数の機器を接続して利用する場合でも足りなくなることはない。

 そして、最も大きな理由が導入コストだった。各社のホームルーターは、いずれも購入時の割引施策によって比較的安価に購入できるようになっているが、ちょうど筆者が導入しようと考えていた7月後半から8月にかけて、とある大手家電量販店でHR01を一括0円で入手できるキャンペーンが実施されていた。つまり、HR01購入時にかかるのは、事務手数料の3,300円のみだったのだ。

 HR01をドコモオンラインショップで購入するのであれば、事務手数料はかからない。しかし当時ドコモオンラインショップではHR01向けの割引施策は行なわれておらず、機種代金の3万9,600円を負担する必要があった。実際には、月々サポートによって36カ月間利用料金から最大1,100円が割り引かれるため、機種代金は実質無料になる。

 ただ、家電量販店で一括0円で購入した場合にも、同じ内容の月々サポートが受けられる。つまり、3,300円の事務手数料を負担しても、家電量販店で購入した方が圧倒的にお得だったわけだ。

HR01をドコモオンラインショップで購入すると事務手数料は不要だが、端末代金が3万9,600円かかるため、事務手数料がかかっても一括0円で購入できる家電量販店での購入を選択
家電量販店で購入しても36カ月間最大1,100円が割引かれる月々サポートが受けられるので、事務手数料を負担しても圧倒的に得だった

 ちなみに、HR01の月額利用料は、「home 5Gプラン」の4,950円。ここから36カ月間は1,100円が割り引かれるため、3,850円で利用できることになる。

 同時に、筆者はこれまでNTTドコモの光コラボレーションモデルを利用していなかったため、割引施策の「ドコモ光セット割」が適用外だった。しかし、HR01を契約すると、別途用意されている割引施策「home 5G セット割」が適用されることになる。筆者は家族の分も含めてNTTドコモを4回線(5Gギガホプレミアが1回線、5Gギガライトが2回線、データプラスが1回線)利用しており、home 5G セット割によって携帯回線の利用料金から最低でも毎月1,100円の割引が追加で得られることになる。

 つまり、HR01の実質の利用料金は2,750円以下になる計算だ。当初の事務手数料3,300円を加えても、最低でも36カ月間は楽天モバイルの3,278円より安くなるため、事務手数料の負担もすぐに回収できる。

 このほかにも、光回線などのような工事が要らず、契約後すぐに利用可能で、不要になった場合でも違約金なしでいつでも解約でき、回線工事費用もかからない。そのため、筆者がまた引っ越してもhome 5Gを解約して楽天モバイルに戻せばいい、と考えた。

 以上の理由から、NTTドコモのHR01を選択したのだった。

 ちなみに、HR01はホームルーターという性質上、持ち運んでの利用はできないようになっている。契約時に利用する住所を登録する必要があり、その住所以外の場所では利用できないのだ。今回は実家に設置して利用するため特に問題はないが、一般的なモバイルルーターとは使い方が大きく変わるため、購入時には注意が必要だろう。

ルーターとしての機能はエントリーモデルレベル

 HR01は2021年8月に登場した製品なので、すでに僚誌ケータイWatchなどで紹介記事やレビュー記事が多く掲載済みではあるが、あらためて機能を簡単に紹介しておく。

【表1】home 5G HR01の主な仕様
WAN側モバイル通信 5G Sub-6、4G
対応バンド 5G:n78/n79
4G:Band 1/3/19/21/28/42
データ通信速度 5G:受信最大4.2Gbps、送信最大218Mbps
4G:受信最大1.7Gbps、送信最大131.3Mbps
無線LAN Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)、1ストリーム(1×1)、ビームフォーミング対応
無線LAN速度 5GHz帯域:最大1,201Mbps(Wi-Fi 6)
2.4GHz帯域:最大573Mbps(Wi-Fi 6)
無線LANセキュリティ WPA2/WPA3
無線LAN同時接続台数 64台
有線LAN 1000BASE-TX 1ポート
サイズ/重量 95×95×170mm/約720g

 まず、WAN部分については、NTTドコモの4G/5Gサービスに対応。なお、5G通信で対応するのはSub-6のみで、ミリ波は非対応。

 通信速度は、5Gが受信最大4.2Gbps、送信最大218Mbps。4Gが受信最大1.7Gbps、送信最大131.3Mbps。筆者の実家は5Gエリア内なので、十分な速度が期待できる。

 続いてルーター部分。無線LANは、Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)準拠となる。ただし、アンテナが1本の1ストリーム(1×1)対応にとどまるため、通信速度は5GHz帯域が最大1,201Mbps、2.4GHz帯域が最大573Mbpsとなる。

 無線LANは、5GHz帯域と2.4GHz帯域を同じSSIDで利用するだけでなく、複数のSSIDを登録して利用する「マルチSSID」に対応しているため、5GHz帯域と2.4GHz帯域それぞれに個別のSSIDを登録して利用することも可能。無線LANセキュリティはWPA3やPMF(Protected Management Frames)をサポートしており、大きな不安はない。

 有線LANは、1000BASE-TX対応のGigabit Ethernetポートを1ポート用意。もちろん複数ポート用意されていた方が複数の機器を接続できるためありがたいが、そこはハブを利用することで対応できるため、特に気にはならない。

 このほかのルーター機能としては、MACアドレスで接続端末を制限するMACアドレスフィルタリングや、ファイアウォール、IPアドレスフィルタリングなどの基本的なものを用意。ただ、全体的に機能は豊富というわけではなく、どちらかというとエントリークラスの無線LANルーターとほぼ同等と考えていい。個人的には機能面の弱さにやや不満はあるものの、全体的にはまずまず安心して簡単に利用できる製品と言っていいだろう。

無線LANは複数のSSIDを登録して利用する「マルチSSID」に対応。5GHz帯域と2.4GHz帯域を同じSSIDで利用するのはもちろん、個別のSSIDを登録して運用することも可能
無線LANセキュリティはWPA3やPMF(Protected Management Frames)をサポートしており、大きな不安はない
MACアドレスで接続端末を制限するMACアドレスフィルタリングや、ファイアウォール、IPアドレスフィルタリングなどの基本的な機能は備えるが、エントリールーターレベルでそれほど高機能ではない

 サイズは95×95×170mm、重量は約720g。比較的軽量コンパクトなボディなので、置き場所には困らないはずだ。正面上部には電源や動作状況などを示すLEDインジケータが用意され、背面には電源コネクタと有線LANポート、WPSボタン、再起動ボタンを配置される。

 そして底面にはNano SIMカードスロットとリセットボタン、そしてメンテナンス用と思われるUSB Type-Cポートを備える。また、底面には初期設定のSSIDとパスワード、スマートフォンなどを無線LANに接続するためのQRコードなども記載している。

home 5G HR01のパッケージ
サイズは95×95×170mm、重量は約720gと比較的軽量コンパクトなボディなので、置き場所には困らない
背面にWPSボタン、再起動ボタン、Gigabit Ethernetポート、電源コネクタを配置
こちらが底面。底面には蓋があり、その中にNano SIMカードスロットとメンテナンス用と思われるUSB Type-Cを配置。また、リセットボタン、Wi-Fi接続用のSSID/パスワードの初期設定情報やスマートフォン接続用QRコードなども記載している

 LEDインジケータは、左からWAN側の接続状況、電波強度、ステータスの3つを用意。WAN側の接続状況は、青で点灯すると5Gで接続、緑で点灯すると4Gで接続していることを示す。このほか、動作に異常がある場合には青や赤で点滅したり赤で点灯する。

 電波強度は、青が強、黄が中、赤が弱の順で電波の強さを示す。

 ステータスについては、正常に動作している場合は青で点灯する。また、WPSでの接続待機中は青で点滅。そのほか、何らかの異常やソフトウェアの更新などがある場合には、黄色や赤で点灯または点滅するようになっている。なお、本体に電源ボタンはなく、ACアダプタを接続すれば即電源が入るようになっている。

 利用時には、底面のNano SIMカードスロットに、契約時に渡されたNano SIMカードを装着し、ACアダプタを接続するだけで、即座にデータ通信が可能となる。

正面上部に、動作状況を知らせる3つのLEDインジケータを用意。こちらは、5G接続で問題なく動作し、電波強度も強いことを示している
こちらは5G/4Gランプが緑に点灯しており、4Gに接続していることを示している
契約時に渡されたNano SIMカードを装着すると、すぐにデータ通信が可能となる

やはり設置場所は重要

 無事HR01を8月上旬に入手し、実家で利用しはじめた。ただ、モバイル回線を利用したデータ通信サービスということで、懸念されるのが設置場所によるデータ通信速度の違いだ。スマートフォンでも、建物の窓際付近と内部とでデータ通信速度が大きく上下することがあるが、それはHR01についても同様。実際に多くのHR01利用者が設置場所で速度が大きく変わることを報告している。そこでまず最初に行なったのが、どこに設置するのか速度をチェックしながら決めることだった。

 まず、実家内で自分が使っている部屋の中央付近で速度をチェックしてみたところ、受信速度は136Mbps前後だった。

 それに対して窓際に設置したところ、受信速度が468Mbps前後に上昇。双方の距離は3mほどしか違いがない。場所によって速度に違いが出るとは想定していたが、ここまで大きな違いが出るとは思っていなかったので、少々驚かされた。それと同時に、HR01のような5G対応ホームルーターを利用する場合には、設置場所の見極めが重要と言える。

 というわけで、HR01は窓際に設置して利用することにした。

筆者が利用している部屋に設置したところ、受信速度は実測で136Mbpsほどだった
HR01を窓際に置いたところ、受信速度が468Mbpsへと大きく向上。設置場所のわずかな違いで大きな速度差が出る場合があるため、設置場所の見極めは重要だ
最終的に、このようにHR01を窓際に置いて利用することにした

概ね満足しつつも、LANの仕様には強い不満が

 HR01を使い始めて4カ月ほど経過している。その間、WANの接続が4Gに落ちているということが数回あったが、それ以外には大きなトラブルなく利用できている。接続が4Gに落ちた場合には、本体を再起動すれば5G接続に戻るため、設定で用意されている定期的に本体を再起動する機能を活用し、1週間に1度自動的に再起動するように設定して利用している。

 接続機器は、ノートPCやスマートフォン、タブレットなど常時9台ほどの機器を無線LANに接続するとともに、NASやデスクトップPCはハブを介して有線LANに接続している。常時12台前後の機器を接続するだけでなく、レビュー作業を行なう場合には15~18台ほど接続することもあるため、楽天モバイルのモバイルルーターではさばききれない数に達する。もちろん、HR01は最大64台の機器を接続できるため、すべての機器を問題なく利用できている。

 データ通信速度は、受信は安定して300~400Mbpsの速度が得られているのに対し、送信は利用開始当初で20Mbps前後、11月中旬以降は30~40Mbps前後で推移している。HR01のWAN側通信速度は、理論値ではあるが受信最大4.2Gbps、送信最大218Mbpsということなので、筆者の利用環境での実効速度は双方とも理論値の10分の1程度となっている。おそらく設置場所の電波状況によるものと思うが、まあこんなものか、という印象だ。

 ただ、5Gということを考えると少々物足りないのは事実だ。特に受信速度はもう少し速いと期待していたので、いま一歩と言わざるを得ない。何より、4G接続の楽天モバイルでも送信速度が40Mbps前後だったことを考えると、5G接続なのに4Gと同等か遅い送信速度しか発揮できないというのは残念だ。

速度は時間帯によって多少上下するものの、受信は安定して300Mbpsを超える速度を発揮。ただし送信は20~40Mbps前後と、想定以上に遅かった

 また、製品の仕様についてもいくつか不満がある。その1つは、ルーターとしての機能面が弱い点だ。これについては、製品の性質上しかたのない部分もあるかもしれないため、我慢できないものではない。しかし、もう1つの不満はかなり大きなものとなっている。それはLANの仕様だ。

 HR01では、WAN側の5Gのデータ通信速度として理論値となる受信最大4.2Gbpsを大きくアピールしておきながら、LAN側は最大1,201Mbpsの無線LANと1Gbpsの有線LANしか用意していない。つまり、無線LANと有線LANを同時に利用したとしてもWAN側の最大受信速度を活かせる仕様ではないのだ。製品ページには、脚注で「Wi-Fi通信時の最大伝送速度は1201Mbpsとなります」と書かれてはいる。実際にそういう意図はないにしても、消費者を欺いていると言われてもしかたがないと感じる。

製品情報で「5G高速通信対応!最大受信速度4.2Gbps!」とアピールするも、LAN側は無線LANが最大1,201Mbps、有線LANがGigabit Ethernetと、アピールする速度をまったく活かせない仕様で非常に残念

 データ通信速度の理論値と実効速度に大きな開きがあるのは常だ。特にモバイル通信の世界ではその傾向が強く、理論値に近い速度が得られることはほとんどない、ということは理解している。とはいえ、WAN側で理論値の速度をアピールするのであれば、実際には理論値の速度が得られることがなく実利用でまったく不都合がないとしても、LAN側はWAN側の理論値の速度を活かせる仕様であるべきだ。そういった意味でHR01は、非常に中途半端な製品と言わざるを得ない。

 それでも、これら不満はあるものの、HR01を利用し始めて以降、大きなデータをクラウドにアップロードするのに時間がかかるということ以外には特に不都合なく利用できている。近年増えているWeb会議でも、映像が止まるといったトラブルはまったく発生しておらず、導入コストやランニングコストなどもあわせて、概ね満足してHR01を利用できている。そのため、HR01の選択は間違っていなかったと思っている。

 なおNTTドコモは、HR01の後継モデルとなる「HR02」を2022年10月に発表。HR02では、5Gのアンテナを4本搭載して受信感度を高めるとともに、無線LANが4ストリーム(4×4)対応で最大通信速度が4,804Mbpsに、有線LANが最大2.5Gbpsのデータ通信が行なえる2.5GBASE-Tにそれぞれ仕様を強化している。

 5G部分の速度は理論値で受信最大4.2Gbps、送信最大218MbpsとHR01と同じ仕様だが、LAN側の仕様が大きく強化されたことで速度面の不満が解消されている。HR02の発売は2023年2月を予定とまだ少し先だが、これからNTTドコモのhome 5Gを手に入れようと考えており、時間に余裕があるということであれば、HR02の発売まで待つのもよさそうだ。

HR01の後継モデルとして発表されたHR02。WAN側の仕様はHR01とほぼ同じだが、4本の5Gアンテナを内蔵して感度を向上させるとともに、無線LANは最大4,804Mbps、有線LANは2.5GBASE-Tへと強化され、魅力が高まっている

Adblock test (Why?)


からの記事と詳細 ( 実家で生活しつつ仕事をこなすため、ドコモのホームルーター「home 5G HR01」を導入した - PC Watch )
https://ift.tt/LXUG1lK