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Tuesday, October 24, 2023

GitHubで「偽のスター」を購入して信用度を偽装している ... - GIGAZINE(ギガジン)

tahupedascabe.blogspot.com


GitHubではユーザーがリポジトリにスターを付けることができ、たくさんのスターを集めたリポジトリは「人気がある」「信頼性が高い」とみなされることが多くなります。しかし、それを逆手にとって偽のスターを購入することで人気度や信頼性を偽装しているリポジトリも存在しています。リポジトリに付いているスターが正当なものなのか、それとも偽装されたものなのかについて調べる方法をデータオーケストレーションサービスを提供するスタートアップのDagsterが開発し、ブログに掲載しました。

Tracking the Fake GitHub Star Black Market with Dagster, dbt and BigQuery | Dagster Blog
https://dagster.io/blog/fake-stars

GitHubにおける「スター」は、機能的にはFacebookやX(旧Twitter)の「いいね」と変わりませんが、リポジトリのスター数が多いと使用するライブラリの選定理由になったり、オープンソーススタートアップが資金調達する時に有利に働いたりするなどの特徴があります。

Dagsterチームがいくつかのプロジェクトを観察していたところ、リポジトリの作成直後や新しいリリース・大きな発表の直前などのタイミングで突然スター数が数百個も増加しているのを発見したとのこと。こうした怪しげなスターを付けたアカウントを確認すると、下図の通り同一の日付で作成されていました。


偽のスターを検出する方法を研究するため、Dagsterチームはダミーリポジトリを作成し、実際に下記の2つのサービスからスターを購入してみたとのこと。

・Baddhi Shop
GitHubのスターだけでなく、オンラインのさまざまな指標を購入できるサービスです。GitHubのスターは1000個あたり64ドル(約9600円)で、Dagsterチームは500個のスターを購入したところ、1週間かけてスターの付与が行われました。なお、1カ月後には75%のスターが消え去っていたとのこと。

・GitHub24
スター1個あたり0.85ユーロ(約136円)という高級なサービスです。Dagsterチームが100個のスターを注文すると48時間で付与が完了し、1カ月後も全てのスターが残ったままでした。

下図のスター数の履歴グラフを見ると購入時にスター数が跳ね上がっていることが分かります。


GitHubで偽のスターを付けるためのアカウントは「スパムアカウントであることを隠そうとせず、見ただけですぐに判断できる偽アカウント」と「本物に見えるアクティビティを備えた精巧な偽アカウント」の2種類に分けることができます。Dagsterチームはどちらにも対応するため、スパムの検出器を2つ用意することにしました。

◆明らかな偽アカウントを特定する
DagsterチームがGitHub APIを使用して分析したところ、明らかな偽アカウントには下記のような明確なパターンが存在することが分かりました。

・2022年以降に作成
・フォロワーが1人以下
・フォロー中が1人以下
・パブリックGistなし
・パブリックリポジトリが4個以下
・メール、雇用可否、自己紹介、ブログ、X(旧Twitter)のユーザー名が空
・スター付与日とアカウント作成日、アカウント更新日が同一

こうしたパターンを利用することで、GitHub APIから入手可能なデータのみを使用して疑わしいアカウントを特定することが可能とのこと。


◆巧妙な偽アカウントを特定する
偽のGitHubアカウントのもう1つのグループを特定するのはかなり難しかったとのこと。それぞれのアカウントには人間らしい活動の履歴に加えてプロフィール写真や経歴も用意されており、購入したアカウントだと分かっていても見分けるのは困難でした。

最終的にDagsterチームは「教師なしクラスタリング」と呼ばれる手法を利用しました。この手法では、アクティビティが発生した日などのデータを元にユーザーをグループ化します。本物の人間であればアクティビティはさまざまな日に分散する一方で、偽のユーザーは制御スクリプトなどの都合でアクティビティの発生日が同期し、大きな偽アカウントグループを形成します。

例えば下図はダミーリポジトリにスターを付けたユーザーを「他のユーザーと同じ日にアクティビティが発生した数」と「操作したリポジトリの総数」でプロットしたもの。赤い点は既知の偽アカウントを示しており、黄色い点は偽の疑いのあるアカウントを示しています。


一方、Dagsterリポジトリにスターを付けたユーザーをプロットした結果は下図の通り。左下の黄色い点は誤検知が発生していることを示しているとのこと。


本物と偽物が混じっている疑いのあるリポジトリの分析結果は下図の通り。偽アカウントのグループが形成されています。


さらに、Dagsterチームは偽アカウントのグループが特定のリポジトリとやりとりする傾向があることを発見し、分析の信頼性を改善しました。最終的に以下の手順で偽アカウントを判別したとのこと。

1:ユーザーリストを取得
分析対象のリポジトリにスターを付けた全ユーザーのリストを取得します。

2:「怪しいユーザーグループ」を判別
リストに入っているユーザーが共通してスターを付けているリポジトリを探します。多数のリポジトリに重複してスターを付けているユーザーのグループはかなり怪しいものの、分野によっては本物のアカウントでも一連の同じリポジトリにスターを付ける場合があるため、手順3を行います。

3:アクティビティのレベルでフィルタリング
最後にそれぞれのユーザーのアクティビティを分析します。アクティビティが少ないユーザーのアクティビティの大部分は手順2で登場したリポジトリでのアクティビティで、追加の正当なアクティビティが存在しなかったとのこと。こうして偽のアカウントを特定できました。

ダミーアカウントに対する既知の偽スターに対して分析を行ったところ、非常に計算コストはかかるものの精度98%・再現率85%で偽のアカウントを検出できたと述べられています。いくつかのリポジトリについて今回の2つの手法を利用して偽スター数を調べた結果は以下の通り。教師なしクラスタリングを活用することで、単純なヒューリスティックでは検出できなかった偽アカウントについても検出できるようになりました。

  単純なヒューリスティック
(明らかな偽物, 低再現率)
単純なヒューリスティクス + 教師なしクラスタリング
(明らか&洗練された偽物)
リポジトリ 合計スター数 偽スター 偽スター% 2022年以降の偽スター%
okcash 759 1 0.13% 97%
Simple-GPU 787 159 20% 87%
Notifio 841 97 12% 76%
Mage.ai 3,629 533 15% 30%
Apache Airflow 29,435 17 0.06% 1.6%
Ploomber 3,002 6 0.2% 1.5%
Dagster 6,538 8 0.12% 1.5%
Flyte 3,154 1 0.03% 1.1%


今回分析に使用したコードはGitHubで公開されているので、興味がある人は確認してみて下さい。

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Sunday, October 22, 2023

RME製品がもっとイイ音に!? 「ADI-2」向け電源フィルタが ... - AV Watch

tahupedascabe.blogspot.com
RMEのマティアス・カーステンズ氏

今回取り上げるのは、ドイツRME社が現在開発中の“オーディオインターフェイス用電源”だ。これまで同社は「Fireface」や「Babyface」、AD/DAコンバータの「ADI-2」シリーズなど、プロ・アマから定評あるオーディオインターフェイスを数多く輩出してきたが、それら製品に付属するACアダプターがシンプルなスイッチング電源だったため、一部のオーディオ愛好家の中には、リニア電源に換えて高音質にする、という利用法があった。そこでRMEはついに重い腰をあげ(?)、「これが最高だ」という電源をリリースすることにしたのだ。

正式なリリースはこれからだが、先日行なわれた発表会において、RMEの創業メンバーで開発者のマティアス・カーステンズ氏が開発中のADI-2用電源フィルタ「LNI-2 DC」を一足先に披露した。独占インタビューという形で、LNI-2 DCの詳細について話を聞くとともに、これが何であるかを話してくれたので、少しマニアックに掘り下げていこう。

スイッチング電源とリニア電源

――これまでRME製品は、日本国内でも高い評価で、リスニング用としてもレコーディング用としても幅広く使われてきました。ただオーディオマニアの方々の間からは、ACアダプタが貧弱だ、といった声がよく出ていたように思います。

マティアス氏(以下敬称略):もちろん、我々もそのような声は聞いていました。ただ、我々もオーディオインターフェイスやAD/DAコンバータを設計する上で、さまざまな測定等を行ないながら、最終的に高音質でクリーンな音になるように作っています。その中で当然、電源部分、ACアダプタ部分もチェックしていますから、必要十分なものを提供してきたと自負しています。

――おそらく、ほとんどの人は、現在のACアダプタに不満は持っていないと思いますが、それでも中には別のACアダプタを取り付けて使っている人もいるようです。

マティアス:はい、そうしたことを行なっている方が少なくないことも知っています。そして多くの方々がさまざまなリニア電源を持ってきて、ADI-2に接続しているようです。電源部分を強化したい、という思いも理解できないわけではないのですが、そのほとんどは意味を持ちません。

RMEユーザーが接続して使っているという、リニア電源の例

――RME製品に付属しているACアダプタはスイッチング電源タイプのものですよね。改めてスイッチング電源とリニア電源、何が違うのか教えてください。

マティアス:日本では商用電源として100Vの交流が使われていますが、リニア電源では、この100Vをまずトランスによる変圧器で電圧を落とし、ダイオードブリッジを用いて整流します。さらにコンデンサを用いた平滑回路である程度平滑化した上で、レギュレータを用いて整流後の残留リップル電圧を大幅に低減し、安定した直流電源にしていきます。

それに対してスイッチング電源は、電圧を変える前にダイオードブリッジで整流され、コンデンサで平滑されます。この方法で得られた非常に高い直流電圧は、高周波トランスとスイッチングデバイスで制御されますが、この際ガルバニック絶縁をする形で電圧を分離します。そして出力側に追加のフィルタを通して安定化させるという構造になっています。

スイッチング電源は、とにかく小さくて軽く、効率的であることから、ほとんどの機器で使われており、RME製品でもスイッチング電源を採用しています。

――一般論として、リニア電源、スイッチング電源におけるメリット、デメリットというのはどんなものですか?

マティアス:リニア電源のメリットは非常にクリーンな出力電圧が可能である、という点です。高周波スイッチングノイズが起こらないし、漏れ電流の心配もありません。そうしたことから、一部のユーザーがリニア電源を使っているのでしょう。

一方でリニア電源のデメリットとしては、とにかく低効率であり、高い電力損失があると同時に大きな熱放出があります。また、大きなトランスを使うため重量が非常に大きくなるのもデメリットですね。トランスによる磁気励起によるグランドループを生成してしまうために、浮遊磁場が発生するリスクも高くなります。また商用電源側に電圧変動があると、その変動に激しく影響を受けるという問題もあります。そして何より高価ですよね。

――スイッチング電源のメリット・デメリットはどうですか?

マティアス:スイッチング電源は、先ほども話したとおり、とにかく小さくて軽いというのが大きなメリットです。また非常に高効率で通常80%以上のエネルギー効率を実現します。そのため放熱も非常に小さくなります。

一方、トランスを使用しないため、低周波磁場の生成がないために磁気グランドループ励起もありません。リニア電源のように最初にトランスで電圧を落とす場合、商用電源が100Vなのか、110Vなのか、はたまた240Vなのかによって、それぞれに適したトランスを用意する必要がありますが、スイッチング電源であれば100V~240Vまで、どの電圧であっても1つのスイッチング電源で対応できますし、主電源電圧に変動があっても、その影響を受けないのもメリットですね。そしてコスト的にも安く抑えられるのも重要なポイントです。

もちろん、スイッチング電源にもデメリットはあります。出力される電圧に低周波ノイズは乗りませんが、スイッチングシステムによって、高周波ノイズがどうしても発生してしまいます。また最大200pAの漏れ電流が生じるという問題もあります。アース設置されていないシステムでは、ハムノイズが発生したり、軽度の感電を引き起こすリスクもあります。

――そういう状況を考えると、オーディオマニアがリニア電源を使う理由が分かるような気がします。

マティアス:やはりそれぞれにメリット、デメリットがある以上、一概に片方がいいとは言えないと思います。それぞれの欠点を排除することによって、改善していくことが可能です。

たとえばリニア電源の場合、磁気シールドを用いると共に、すぐに磁気飽和を起こしにくい高品位なトランスを利用することで浮遊磁場を抑えることが可能です。またパッシブリフィルタリング、つまりチョークとフローティング電圧レギュレーターを使用して消費電力を低減させることも可能です。

スイッチング電源の場合は、一次側のPE(プロテクティブアース)端子へ高インピーダンス抵抗を介して接地することで漏れ電流のすべての影響を排除することが可能です。また出力側に追加のLF(ローパスフィルタ)、およびHF(ハイパスフィルタ)を置くことでもノイズを低減できます。

ちなみに抵抗を介した接地はRMEの新しいスイッチング電源でも採用しています。こうした対策を元に製品化するのが、近い将来に発表する予定の「LNI-2 DC」です。これはADI-2シリーズ用の電源としてリリースします。

ADI-2シリーズ

「LNI-2 DC」は電源フィルタ兼スタビライザー

――LNI-2 DCというのは、リニア電源なのですか? それともスイッチング電源なのですか?

マティアス:LNI-2 DC自体はそのどちらでもありません。リニア電源でもスイッチング電源でもいいので、12Vの直流電流を入力すると、まるで電池のような安定したノイズのない電源を供給できるフィルターであり電源スタビライザーです。

――これがLNI-2 DCなんですね。

マティアス:今回持ってきたのはまだプロトタイプであり、少し大きなサイズになっていますが、最終的には左手に持っているもののように、よりコンパクトになる予定で開発を進めてます。

――RMEは、いつも目に見える形でデータを見せて根拠を説明する、という打ち出し方をしているのが好きですが、もちろん、このLNI-2 DCもデータがあるのですよね?

マティアス:もちろんです。それが、下記のグラフになります。これはLNI-2 DCの12Vの出力を周波数分析したものです。これを見ると分かる通り、20Hzから100kHzまで200nVrms以下のノイズレベルであり、極めてノイズの少ないものになっていることが分かると思います。これはほぼ電池に匹敵するレベルのものです。

――ん?? ということは、これは音を表すグラフではなく、電源そのものを測定したものである、ということですか?

マティアス:そのとおりです。

――なぜADI-2の音の測定ではなく、電源そのものの測定なのでしょうか?

マティアス:これまでも主張してきた通り、RMEのADI-2シリーズは付属のACアダプタで十分な性能を出すことができ、通常の使い方であれば、このACアダプタからノイズが乗るということはありません。そのため、ACアダプタをそのまま使っても、LNI-2 DCを通しても基本的に音は変わらないのです。

――だとすると、この新製品LNI-2 DCは無用の長物ということですか?

マティアス:もちろん、そういうわけではありません。通常の使い方であればノイズは乗らないのですが、グラウンドノイズが回り込んだり、漏れ電流によってハムノイズが発生してしまう、ということがあります。単純に人が立って、何かに触っただけでハムノイズが入ってしまうことはよくあることです。

そうした状況になった場合、LNI-2 DCがそうしたノイズをシャットアウトしてくれるのです。さらに超低出力インピーダンス(0.012Ω)でのソース提供を実現し、極めて安定した出力電圧、高負荷レギュレーションが実現されます。そういう意味で、LNI-2 DCを使うことで音質向上を実感できる方は少なくないはずです。

――LNI-2 DCはどのような仕組みなのでしょうか?

マティアス:下記の図が、LNI-2 DCのブロックダイアグラムです。直流を入れると高周波フィルター、ガルバニック絶縁を経て、L/Cフィルター、過電流リミッター、加熱保護装置、ローノイズレギュレータなどを通して、キレイな電源を出力する流れになっています。

――LNI-2 DCはいつごろ発売されて、値段的にはどのくらいになるのですか?

マティアス:現在、設計はほぼ最終段階なので、正式発表までもう少しお待ちください。ただ価格的には安いものではありません。やはり、すべてのADI-2ユーザーに推奨するものではなく、一部の方のための製品となりますし、また部材にもかなりのコストがかかるため、どうしてもそれなりの値段になってしまいます。ただ、間違いのないクオリティなので、ぜひ期待してください。

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VFXアナトミー 実写とVFXの境界を感じさせない逸作 Netflix ... - CGWORLD.jp

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本作は、1年間におよぶ肉体改造・相撲の稽古を経て制作された本格相撲ドラマ。相撲アクションを活かすために求められたVFX制作の裏側を紹介していこう。

記事の目次

※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 302(2023年10月号)からの転載となります。

体当たりの演技を補佐するCG・VFX制作

Netflixにて、2023年5月4日より世界中で好評配信中のオリジナルドラマ『サンクチュアリ -聖域-』。日本の国技である大相撲を題材とし、崖っぷちに追いやられた1人の破天荒な男が力士へと上り詰めていくオリジナルストーリーが描かれている。演者たちは専門家の指導のもと1年間に及ぶ肉体改造・相撲の稽古を行なった上で撮影が進められ、彼らの体当たりな演技が作品の大きな見どころのひとつとなっている。

『サンクチュアリ -聖域-』
監督:江口カン、VFXプロデューサー:松本肇、横石淳、VFXスタジオ:エヌ・デザイン、スタジオ・バックホーン、マリンポスト、日本エフェクトセンター、DigitalClover、日本映像クリエイティブ、ビッグエックス、Android、デジタル・フロンティア、制作:SLOWTIDE、製作:Netflix
www.netflix.com/jp/title/81144910

作品の性質から一見実写が多くVFX要素は少なく感じられるかもしれないが、実際のところ国技館(作中での名称は国技会館)やトレーニングのカット、カツラのバレ消しなど、VFXはそのリアルな芝居やアクションを補佐する役割で膨大なものとなり、大規模な制作体制が採られた。VFXプロデューサーに関しても、松本 肇氏(ビッグエックス)と横井 淳氏(Android)の2名が立てられており、当初のメインは松本氏であったが、怪我によるテーピング消しなどの作業が想定以上に増えていったため、横石氏が作業の一部を補佐するかたちで参加することとなった。

左から、プロダクションコーディネーター・藤田卓也氏(エヌ・デザイン)、VFXプロデューサー:松本 肇氏(ビッグエックス)、VFXディレクター・阪上和也氏、VFXエディター・川瀬基之氏(以上、エヌ・デザイン)

松本氏が統括するパートにおいても今回取材に協力いただいたエヌ・デザインをはじめ計7社ものVFXスタジオが名を連ね、そのボリュームが窺い知れる。「作品の性質上、CGやVFXが目立つものであってはなりませんでした。バレ消しなどの処理なども含め作業要素は膨大にあったのですが、CGがしっかりと実写に馴染み、それでいて効果的な演出となるようクオリティを追求することが第一でした」(松本氏)。

制作は2020年春から開始され、2年10ヶ月ほどの期間を要した。「VFX要素の多さに加え、4K HDRであったことも制作に大きな負荷がかかりました」(エヌ・デザイン VFXエディター・川瀬基之氏)。容易にプレビューすることができないなどの問題もあったそうだが、クオリティに妥協することなく取り組んだという。その甲斐もあり、ドラマ全体を通してVFXパートを見分けるのは非常に難しい。今回はドラマに隠されたCG・VFX制作について、エヌ・デザインが担当したカットから紹介していく。

<1>大相撲の取り組みを支えるリアルな舞台

つながりのある演技を群衆の動きに反映

「エヌ・デザインは国技会館のカットをメインで担当させていただきました。CGによる2階席の観客の再現と、VFX演出、バレ消しなどです」(エヌ・デザイン VFXコーディネーター・藤田卓也氏)。撮影は国技館を模した大規模なセット内で行われたが、セットは1階観客までしか作られておらず、2階席から上はCGで補われている。

それらのカットにおける大きな作業としては、CGによる観客の作成となる。制作にあたってクラウドシミュレーションを含めフローが検討されたが、観客の仕草にこだわりたいという方針で可能な限りデザイナーが手で配置してつくっていくこととされた。

「つながりをしっかりと意識してつくっていきたいと考えました。少ない人数のカットではデザイナーがひとつひとつ手で配置して芝居をつくっていっています。ただし、満員御礼の場合はそれでは対応できませんので、HoudiniのCloudを使用して、プロシージャルに群衆の演技を編集できるよう構築しました。こちらもシミュレーションではなく、可能な限り手で調整できるしくみとなっています」(エヌ・デザイン VFXディレクター・阪上和也氏)。

なお、群衆用モデルは10代、20代、50代の男女で衣装を変えてスキャンして準備され、テクスチャでバリエーションを増やしている。モーションも同じく複数人の動きをモーションキャプチャし、シチュエーションごとに複数パターンが撮影された。「モブシーンにおいては規則性が見えてしまうと一気にCG感が出てしまいますし、不自然に見えてしまいます。そのため、モデルも動きも自由にカスタマイズして、カットに合った演技、演出をしっかりさせることが重要でした」(阪上氏)。

国技会館の制作

大型のセットで撮影され、セット外をCGで補完。国技会館のCGアセットはスタジオ・バックホーンが担当、エヌ・デザインが各カットの制作を行なった。

ファイナル(グレーディング前)
 撮影プレート
  • キーイング
  • CG素材

観客のモデル

10代、20代、50代の男女を衣装を変えてスキャニングしてベースモデルが準備された
Attributesでカラーを変更し、バリエーションが増やされている

Houdiniによる群衆シーンの作成の様子

  • モーションデータのライブラリ。fbxでモーションデータを読み込み、KineFXで扱えられるようMotionClipへ変換。使用するフレームを抜き出し、モーションの開始と終わりを10fでブレンドしてモーションがループするように設定された
  • エージェントのタイプの選択。性別、年代、服装を選択可能
モーションデータを配置されたエージェントに適用

座布団が投げ込まれるカット

第6話、観客席より土俵に座布団が投げ込まれるカット。実物の座布団に加え、CG座布団が追加されている。

 ファイナル(グレーディング前)
  • 撮影プレート
  • キーイング素材
  • レンダリング素材
  • CG素材

座布団のシミュレーションの様子

  • 座席の座布団をエミット位置とし、パーティクルの発生点を決定
  • POP Sim。パーティクルを座布団の位置から中央方向に発生。座布団は大きくカーブしながら飛ぶため、パーティクルの進行方向のVelocityと上方向({0,1,0})の外積をとったベクトルをVelocityに足して、カーブする軌道に調整
  • パーティクルに座布団のモデルを適用
  • 地面付近の座布団を抽出し、Vellumを使ってCloth Simを行い、POP Simと統合

通路から入り土俵を望むカット

第3話の通路から入り土俵を望むカット。別の撮影場所となるため通路にグリーンバックを配置して撮影し合成している。

  •  撮影プレート
  • ファイナル(グレーディング前)

<2>FaceCapによるフェイシャルアニメーション

若き日の猿将親方をCGで再現

ここではCGで制作された若き日の猿将親方の取り組み(第7話)を紹介しよう。「猿将を演じたピエール瀧さんの若い頃の顔をCGで作成し、それを取り組んで演じる役者に合成しています」(阪上氏)。顔のモデルはピエール瀧氏の顔をスキャンした後、若い顔へと加工された。なお、3Dスキャンデータは、LightStageでベースを1パターン、その他のバリエーションの表情を通常のスキャニングで6パターンが用意されたとのことだ。

続く表情の作成では、FaceCapによるフェイシャルキャプチャが用いられた。「FaceCapはこれまで検証してきて本作で本格的に使用してみましたが、既存のフローで準備しているフェイシャルターゲットと相性が良かったです」(阪上氏)。フェイシャルキャプチャの運用において、リターゲティングにおけるターゲットモデルが重要となるが、エヌ・デザインでは様々なフェイシャルキャプチャに対応できるよう50以上のターゲットを準備しており、この準備されたサンプルモデルのターゲットを実モデルに転写・複製できるようにしくみ化されている。「トポロジーを合わせることで転写できるようにしています。もちろん転写後の調整は行なっています」(阪上氏)。

なお、フェイシャルキャプチャ用動画の撮影もピエール瀧氏が演じている。「フェイシャルに関してはピエール瀧さん自ら演じてもらえたのは大きかったですね。取り組みの力士の動きに合わせて演技してもらいましたが、ピエール瀧さんらしい表情をダイレクトに若い顔の反映させることができました(阪上氏)」。

本カットはTVに映し出されるVHSの映像となっているが、そのVHS映像の風合いも非常に見事に再現されている。コンポジットはNukeにて行われたとのことだが、「歪みやノイズ、色味などを様々なフィルタを組み合わせて作成しました。チリチリしたノイズが下の方に入ったりとか、ちょっと横に色がずれていたり、硬い色味だったり、記憶と実際のVHSを参考に丁寧につくり上げました」とのこと。こうしてつくられた映像がはめ込み合成された。

フェイシャルキャプチャデータの運用

FaceCapによるフェイシャルキャプチャデータの運用の様子。異なるモデルであってもトポロジーを合わせることでターゲットを容易に複製できるようにされており、本カットのみならず前項で紹介した国技会館内の観客にも使用されている。

VHS映像の再現

  • 低解像度感加工前。顔の差し替えとしてもともとのサイズでコンポ
  • オリジナルサイズに一番近い解像度で4:3にしてレイアウトを決め、解像度を下げ、Clampで白と黒をたたく。Blocky・Sharpen・Blurをくり返し低解像度感を表現
  • 画面下にノイズ加工。時々ランダムに現れるように調整された
  • 画面横・下に入る歪みと、人物や物のエッジに入る走査線のようなノイズを追加
  • 色収差、カラコレで古っぽく加工
  • 画面下のテープが擦れたようなノイズの追加
はめ込み処理

CGWORLD 2023年10月号 vol.302

特集:『ポリゴン・ピクチュアズ40周年をふり返る』
判型:A4ワイド
総ページ数:112
発売日:2023年9月10日
価格:1,540 円(税込)

詳細・ご購入はこちら

TEXT_渡邊英樹
EDIT_藤井紀明 / Noriaki Fujii(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada

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