来年四月から小学校でプログラミング教育が必修化される。狙いは、コンピューターの専門技術を習得することではなく、目的を達成するためには、何をどんな順序で進めていったらいいか考える力を身に付けることだという。こうした力を育むために、普段の家庭でできることを専門家に聞いた。 (添田隆典)
平たく言えば、プログラミングとは、私たちが「してほしい」ことをコンピューターに指示すること。明確な指示を出すには「まずAをして次はB。もしBがだめならC」などと、効率的な手順を論理的に組み立てる必要がある。
「献立を決め、おいしく食べるために調理を工夫するのも立派なプログラミング教育です」と、愛知教育大准教授の磯部征尊(まさたか)さん(42)は指摘する。例えば、みそ汁を作るにはまず、できあがりをイメージし、材料と分量、「具材を切る」「だしを取る」「煮る」「みそを溶かす」といった手順を考えることが大事。加えて、調理の際は、火加減や味付けなどを変え、一番良い味にするための方法を見つけていく。
さらに「どうすれば手間が省けるかまでを考えられると、よりプログラミングの思考に近くなる」と磯部さん。完成までの時間を決め「時間内に作るにはどんな工夫ができるかな」と問いかけるといい。「具材は全てあらかじめ用意し、まとめて切っておく」といった案が出てくれば効率的な手順を考えた証しだ。「調理器具は具を煮ている間に洗う」など段取りを考えさせるのも良い訓練になる。
子ども向けのプログラミング教室を展開する「キラメックス」(東京)取締役の伏田雅輝さん(33)が勧めるのは、買い物だ。野菜やコメ、肉、飲み物、お菓子など売り場が分かれているスーパーで、効率的な回り方を考えさせよう。店内の地図などを見て売り場を確認、どの順番で回ったら最短距離で買い物が済むかを考える。「途中で『お父さんのビールを買う』などと変則的な条件をまぜると、ゲーム感覚で楽しめて、試行錯誤する力も付く」と助言する。
親世代は、プログラミング教育と聞くと、パソコンやタブレット端末でソフトを作動させるためのプログラミング言語を学ぶことと考えがちだ。小学校での必修化を前に、大手通販サイト「楽天」が十月に行った保護者三千七百人への調査でも「親の自分が理解できるか不安」との回答が53%を占めた。
しかし、文部科学省も学習の仕方を示す手引の中で「プログラミング言語や技能の習得自体が狙いではない」と明記。実際、来年四月から使われる小学校の教科書を見ると−。タブレット端末を使う五年生用の大日本図書の算数では、「正多角形をかく」には、どんな条件を、どんな手順で使えばいいのかを論理立てて考えさせている。ちなみに「『右に○△進み、左に一二〇度曲がる』を三回繰り返す」で正三角形がかけるといった具合だ。
簡単なロボットやスマートフォンのアプリなどを作る教室も人気だが、磯部さんも伏田さんも「焦って通わなくても大丈夫」と口をそろえる。磯部さんは「日々の生活の中でも訓練ができると知ってほしい」と力を込める。
来年4月から使われる大日本図書(右下)などの小学校の教科書 |
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December 13, 2019 at 06:18AM
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