8月下旬、Google Chromeに「とてつもない」量のネットワーク帯域幅やバッテリーを消費する広告をブロックする機能が追加された。導入が発表された当時、一部のパブリッシャーを身構えさせた、あの機能だ。
今回米DIGIDAYの取材に応じてくれたグローバルパブリッシャーのプログラマティック部門シニアマネージャーおよび経営幹部ら4名は、この新しいChromeのフィルターについて、聞いていなかった、あるいは5月に機能追加についての発表があって以降Googleの担当者からは何の情報も届いていない、と証言した。そしてこのうち2人と、ほかにも数名の業界関係者が、今回のアップデートが及ぼしうる影響や技術的側面について、いまだはっきりしない部分があると話す。一方で、こうした展開になることを認識していたと述べたパブリッシャー幹部も、上記とは別に2名いた。
厳格な対応も詳細が不明
5月にChromiumとGoogle Developersのブログで発表された、この重い広告に介入する機能「Heavy Ad Intervention」は、ネットワークデータを4MB超消費したり、CPUを30秒間のうち15秒間占有したり、全体のCPUを60秒間占有したりする広告を「アンロード」するもので、主に動画広告に影響してくるフィルターであると考えられる。このフィルターでブロックされると、広告が表示されるはずだった場所には「広告が削除されました(ad removed)」という文言の入った灰色の正方形が表示されることになっている。
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Google Developersに書かれている手順に従えば、このHeavy Ads Interventionが最新の安定版であるChrome 84以降での表示にどのような影響をおよぼすのかテストすることも可能だ。昨年、あるChromeエンジニアがソースコードのホスティングサービスであるGitHubに書き込んだところによると、この機能は暗号通貨のマイニングをする広告や「動画ファイルのデコードやCPUのタイミング攻撃など、負担のかかる操作をJavaScriptで実行する」広告といった、ユーザーエクスペリエンスの質を低下させる行為に介入するよう設計されているという。
だが、あるグローバルパブリッシャーのプログラマティックマネージャーは、アップデートの数日前にGoogleのアカウントマネージャーと連絡を取ったのに、Heavy Ad Interventionの最新情報は何も伝えられなかったと語る。「こうしたことを実現するために、適度に厳しい期限が設けられていることに密かに感謝することもあるが、今回は控えめに言ってもきつすぎる」と、このプログラマティックマネージャーは話す。
また、別の大規模パブリッシャーで広告業務を取り仕切る幹部にも話を聞いたところ、やはりリードタイムがもっと欲しかったという話が上がった。「サイトのユーザーエクスペリエンス向上を目指すことには大賛成だ。だが、今回は突然のアップデートだったため、事前に広告主に警告ができなかった」。
この広告運用部門の幹部は、広告アセットを見ただけではそれがどれほど「重い」のか、新しいフィルターでブロックされるかどうかを見極めるのは難しいという。さらに、複数のデバイスに対応できるようさまざまなバージョンの表現を用意しているキャンペーンなどの場合、状況はより困難になる。
今回の取材では、Googleには介入がおこなわれたときにパブリッシャーに通知するレポートAPIがあるとはいえ、どんな広告が介入を引き起こすのかの基準についてより詳しい情報があれば、社内で対応する開発者を配置する必要もなく助かるという声も上がっていた。また、「アンロード」の対象となりページ上で灰色のボックスとして表示された広告でも、Googleアドマネージャーでインプレッションとしてカウントされてしまうのかといった点も明確ではない、という声もある。
ChromeおよびGoogleの広報担当者は、公表を前提としたコメントは差し控えたいとした。
各社の対応にも差が
5月に投稿されたChromeのブログ記事には、この月に「重い広告」の閾値を超えたのは、広告全体の約0.3%にすぎないと書かれている。だが市場調査会社ネットマーケットシェア(Netmarketshare)は、世界のブラウザ市場でのChromeのシェアが69%であることを思えば、約0.3%といっても決して少なくはないと指摘する。
動画広告プラットフォーム、ティーズ(Teads)の広報担当者は、今回のアップデートは8月25日に正式リリースされたものの「今のところまだ何も影響は出ていない」としている。ユーザーがブラウザを最新バージョンにアップデートするには、通常10日以上はかかるためだ。いずれにせよティーズとしては、今回のアップデートは自社のビジネスに「大した影響は及ぼさない」と予測していた、と同社CCO(Chief Commercial Officer)のジェレミー・アルディーティ氏は語っている。これは、広告が素早く読み込まれるよう、ファイルサイズの圧縮に長年注力してきたためだ。また5月の発表以降、基準にあわない広告を自動で検出し、圧縮するなどの方法で修正するツールをパブリッシャーパートナー向けに展開しているという。
新型コロナウイルスの危機が夏になっても続き、メディア企業や広告に関わる企業は「5月から8月にかけて、間違いなくそちらに注意が向いていた」と、アルディーティ氏は指摘する。「そのせいで、一部企業が今回の動きをキャッチし損ねた部分もあるだろう」。
ただ業界トップレベルの企業は各社すでに、デバイスのリソースを過度に使ったり、ユーザーエクスペリエンスの質を損なったりする広告を減らすよう、しばらく前から取り組みを進めてきていると専門家らは指摘する。実際、Google、グループ・エム(GroupM)、P&G、インタラクティブ広告協議会(Interactive Advertising Bureau:IAB)、世界広告主連盟(World Federation of Advertisers:WFA)といった企業や業界団体が手を組み、ユーザーにとって煩わしい広告フォーマットの排除を目的に「Coalition for Better Ads(CBA)」を立ち上げたのは4年前のことだ。そしてChromeは2018年に、この連合の基準を満たさない広告が掲載されているページを自動的に除外するフィルターを導入している。
それでもやはりこのアップデートで「そこまで技術力のない、基準を満たせていない企業はどこもかなりの痛手を被るだろう。ペイロード(データ本体)が大きな広告を出していて、あまり最適化も進められていないようなところ──代表的なのは広告内ゲームのプロバイダーだ」と、アドテク企業カーゴ(Kargo)のCEO、ハリー・カーマン氏は語る。
Chromeが唯一の監査機関に?
今回のHeavy Ad Intervention機能の追加は、2022年に迫るChromeのサードパーティCookieサポート終了に向けて、広告主、パブリッシャー、アドテク企業らが準備を進めている最中というタイミングで実施された形だ。
アドテク企業マグナイト(Magnite)のCTOで、オープンソースのヘッダービディングテクノロジーを開発するプレビッド(Prebid.org)の会長も務めるトム・カーショー氏は、このHeavy Ad Interventionには、プライバシーサンドボックスの一環として進められているサードパーティCookie廃止についてのChromeの考え方が、懸念すべきものであることを予兆させる部分があると述べた。
カーショー氏によれば、これまでChromeのフィルタリングは、個々の広告の影響を動的に測定するのではなく、「URLベースのブロック」に重点を置いたものだったという。問題は、何をもって広告を「重い」とするかについてのChromeの意思決定に、パブリッシャーやプラットフォームが異議を唱えるための手段や裁決システムが、明確に決まっていないことだ、と同氏は指摘する。
「ユーザーのデバイスを破壊するような広告を表示してはいけない、という考え方に反対しているわけではない」と、カーショー氏はいう。「私が懸念しているのは、Chromeが広告業界唯一の裁判官、陪審員、監査機関になるという彼らが自ら掲げた使命の下に、広告認知に関わる部分を自分たちのテックスタック(複数のテクノロジーの組み合わせ)でどんどん発展させはじめていることだ」。
[原文: Google Chrome’s new ‘heavy ads’ blocker catches some publishers by surprise ]
LARA O’REILLY(翻訳:半井明里/ガリレオ、編集:分島 翔平)
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September 01, 2020 at 02:50PM
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