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Wednesday, December 16, 2020

特別な日に作りたい、ビーフの赤ワイン煮込み - 朝日新聞社

tahupedascabe.blogspot.com

料理家・冷水希三子(ひやみず・きみこ)さんが読者と私たち編集部のリクエストに応えて料理を作ってくださるという夢の連載。今回はクリスマスのディナーやお正月の食卓にもぴったりな、華やかなビーフの赤ワイン煮込みをご紹介します。

     ◇

―― 冷水先生、こんにちは。今年も残すところ、2週間となりました。

冷水 だんだん年末感が増してきましたね。

―― これからはクリスマスやお正月など、楽しいイベントが盛りだくさんです。特別な日に作るお料理を教えてください!というリクエストが届いています。

冷水 せっかくですから、腕をふるって欲しいですよね。

―― 今回は少しだけ背伸びしたお料理でもいいかな~と思うのですが、いかがでしょうか?

冷水 特別な日に作る料理ですから、少し頑張ってみますか! では、ぜいたくに牛肉の赤ワイン煮込みはどうですか? 

―― おお~! なんだか本格派な響きです。でも……なんだかとっても難しそうです。

冷水 仕込みも入れると少し手間がかかりますが、技術的にはそこまで難易度は高くないです。時間をかけて丁寧に作れば大丈夫ですよ。

―― 先生と一緒に作る今年最後のお料理ですし、頑張ってみたいです!

特別な日に作りたい、ビーフの赤ワイン煮込み

今回は牛バラ肉と牛スネ肉の2種類。違う部位を使うことで食感の違いを楽しめます

 

冷水 まずは料理する前夜の仕込みから。牛肉を赤ワインに漬け込んでおくのですが、このときにんにくを一緒に入れて香りと風味づけをします。

―― わ~、大きな牛肉! これだけでテンション上がります(笑)。

冷水 今回はバラ肉とスネ肉の2種類の部位を使いますが、これはお好みで。今回は2~3時間ほどじっくりと煮るので、大きめサイズでも柔らかくなります。

―― 大きいお肉がゴロゴロ入っていた方が食べ応えもありますもんね。

冷水 ここからは調理当時の工程です。一晩マリネした牛肉はザルなどにあけます。このとき一緒にマリネしたにんにく、マリネ液も捨てずにとっておいてくださいね。

―― そして……出ました! 冷水先生恒例の「肉の別焼き!」。チキンのサフラン煮込みを思い出します。

冷水 はい(笑)。肉汁を閉じ込めるために、軽く強力粉をはたいてからフライパンで焼きます。ポイントは強火でサッと焼くこと。弱火でじわじわと火を入れると肉汁が逃げてしまうので。

―― けっこう表面が黒くなってきましたが、大丈夫ですか?

冷水 強力粉をつけているのですぐに焦げ目がつきますが、中はレアなので大丈夫です。お肉のサイズが小さいとすぐに火が通ってしまうので、大きめサイズの方がいいですね。

―― お肉の表面が焼けたら取り出して、次の工程は?
 

特別な日に作りたい、ビーフの赤ワイン煮込み

牛肉を焼く時は強火でサッと火を通します。強力粉をはたいているので表面がすぐに黒くなりますが、それでも中はレアなのでご安心を

冷水 フライパンの油を拭き取って、そこにザルでこしたマリネ液を入れて煮立てます。

―― わわわ……、ものすごい勢いでアクが出てきました!

冷水 そう、このアクを取り除くために一度煮立たせるんです。丁寧にアクをとったら、キッチンペーパーを敷いたザルでこしましょう。

―― こういう細かい工程が、雑味を消してきれいな味を作るんですね。

冷水 そしてここでようやくお鍋の登場です。オリーブオイルを入れた鍋にニンジン、玉ねぎ、マリネしたにんにくを入れて熱します。油が回ったら赤ワインとトマトピューレを加えて10分ほど煮ます。

―― トマトピューレが入るんですね。

冷水 トマトの酸味が加わると、さっぱり感が出て、牛肉でも重たく感じないんです。次にアクをとったマリネ液と牛肉、鶏スープを鍋に加えて煮込みます。ここでもアクが出るので、丁寧に取り除いてください。そして2時間ほどじっくり煮込みます。

―― 鶏スープは固形のチキンブイヨンでもいいですか……?

冷水 はい。もしゆで鶏を作ることがあったら、そのときのゆで汁を保存しておくといいですよ。冷凍保存できるので、便利です。

特別な日に作りたい、ビーフの赤ワイン煮込み

マリネ液をフライパンで熱すると、白いアクが一気に出てきます。それを丁寧に取り除いてから、ペーパーを敷いたザルでこしましょう。このひと手間で、雑味のない煮込みになります

―― なるほど! その手がありますね。しかし2時間煮込むとは……、なかなか長い道のりですね(笑)。

冷水 牛肉は最初に火を通したときは硬くなりますが、その後じっくり煮込むと柔らかくなるんです。スネ肉もホロホロっとした感じになって、すごくおいしいんですよ。

―― クリスマスディナーだったら、この煮込み時間の間に前菜やスイーツを作るのもいいですね。

冷水 最初にアクをとっておけば、あとは弱火にかけておくだけなので、他の作業も十分できますよ。

(2時間後……)

冷水 そろそろお肉が柔らかくなってきた頃です。

―― あれ? またしてもザルがスタンバイしていますが……。

冷水 はい、最後のひと手間です。鍋をザルにあけて、煮汁と牛肉だけを鍋に戻します。

―― え、ニンジンと玉ねぎ、にんにくは食べないんですか!?

冷水 食べてもいいんです。ただ、味や風味は全部煮汁に移っているのでね。今回は牛肉が主役ですから、ご容赦ください!

特別な日に作りたい、ビーフの赤ワイン煮込み

マッシュルームはフライパンでサッとバターソテーしてから、最後に鍋へ。バターの香りが加わって、さらに華やかな風味になります。煮汁の量やとろみ加減は、最後の煮込みの工程で自分好みに調節してください

―― おっと……、さらにコンロにはフライパンもスタンバイしています。さらにひと手間ですね(笑)。

冷水 最後にマッシュルームを軽くバターソテーして、鍋に加えます。

―― マッシュルームだけ特別扱い! その心は?

冷水 マッシュルームの食感や風味を生かすためです。煮込むと柔らかくなりすぎて形も味も正体不明になってしまうので。

―― なるほど! たしかにプリプリのツヤツヤです。

冷水 鍋に炒めたマッシュルームを加えたら味を見て、塩加減を調整してください。あとは煮汁の量が好みの具合になるまで煮込んで完成です。

―― ゴロゴロ大きなビーフとツヤツヤのマッシュルーム、シンプルで上品な煮込みですね。

冷水 頑張って煮汁をこした分、雑味のないまろやかな風味になっていると思います。

―― んんん!? 見た目はかなり濃そうですが、食べると軽やかですね。おかげで牛肉のうまみがしっかりと感じられます。

冷水 フルボディーの赤ワインを使うともう少し濃いめの味になると思いますが、今回はおっしゃる通り、お肉の味を感じてもらいたかったので、少し軽めのワインにしたんです。

―― 使う赤ワインで濃さを調節するんですね! 

冷水 はい、そこはお好みで。使うお肉の部位もお好きなものでいいですよ。パンによく合いますが、私はごはんと一緒に食べるのが好きなんです。ぜひ試してみてください。

今日のレシピ

ビーフの赤ワイン煮込み

◎材料(3、4人分)

牛バラ肉塊 400g
牛スネ肉塊 400g

ニンジン 1本
玉ねぎ 1個

マッシュルーム 8個
バター 10g

にんにく 2片
赤ワイン 700ml (マリネ用300mlを含む)
トマトピューレ 大さじ4
鶏スープ 300ml

オリーブオイル 大さじ2
強力粉 適量
塩 適量
こしょう 適量

◎作り方

《作る前夜の仕込み》
 牛肉は5cm角に切り、にんにくは半分に切って芯を抜く。密閉できる袋に牛肉、にんにく、赤ワイン300mlを入れて、冷蔵庫で一晩マリネする。

《調理当日の工程》
 ニンジンは縦半分に切ってスライス、玉ねぎは2cm幅のくし切りにする。

 をザルでこして、牛肉とにんにく、こし汁(マリネ液)に分ける。

 の牛肉は水気を拭き、塩・こしょうをする。強力粉をはたき、オリーブオイル大さじ1を入れたフライパンで表面を焼き、取り出す。

 のフライパンの油を拭き取り、のこし汁(マリネ液)を入れて煮立てる。アクを取り除いたら、ザルにペーパーを敷いてこす。

 鍋にオリーブオイル大さじ1とニンジン、玉ねぎ、のにんにくを入れて火にかけ、油が回ったら赤ワイン400mlとトマトピューレを加えて10分ほど煮る。その後、のこし汁(マリネ液)との牛肉を入れ、鶏スープを加える。途中アクを取り除き、ふたをして弱火で2時間ほど煮る。

 をザルでこして、ニンジンと玉ねぎを取り除き、牛肉とこした煮汁を鍋に戻す。

 バターをフライパンで熱し、半分に切ったマッシュルームを炒める。塩で味を調えての鍋に入れる。煮汁をお好みの加減まで煮て塩で味を調える。

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(料理・レシピ 冷水希三子 写真 関めぐみ 文 小林百合子)

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冷水希三子(ひやみず・きみこ) 料理家

特別な日に作りたい、ビーフの赤ワイン煮込み

料理家・フードコーディネーター。レストランやカフェ勤務を経て独立。季節の食材を使ったやさしい味の料理が評判を呼び、雑誌や広告などで活躍中。器選びや盛り付けに至るまで、その料理の美しさでも注目を集めている。著書に『ONE PLATE OF SEASONS-四季の皿』(アノニマ・スタジオ)、『スープとパン』『さっと煮サラダ』(ともにグラフィック社)など。

PROFILE

  • 小林百合子

    編集者
    1980年兵庫県生まれ。出版社勤務を経て独立。山岳や自然、動物、旅などにまつわる雑誌、書籍の編集を多く手がける。女性クリエイター8人から成る山登りと本づくりユニット〈ホシガラス山岳会〉発起人。著書に『最高の山ごはん』(パイ・インターナショナル)、『いきもの人生相談室』(山と溪谷社)、野川かさねとの共著に『山と山小屋』(平凡社)など。

  • 関めぐみ(写真)

    写真家。アメリカ、ワシントンDC生まれ。スポーツ誌、カルチャー誌、女性誌などで活躍。また、広告やカタログ、CDジャケット、俳優の写真集なども担当。書籍に『8月の写真館』『JAIPUR』など。

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