大人ですら夢中になるのだから、自制心がはぐくまれていない、好奇心旺盛な子供が、インターネットに取りつかれたように熱中してしまうのも無理はない。しかしながらそれを放置していては、学力にも健康にも悪影響が生じ、さらにトラブルに巻き込まれる可能性すらある。保護者達は子供のインターネット利用において、どのような「困った体験」をしているのだろうか。9歳以下の子供達の実情を、内閣府が2021年3月31日に発表した、低年齢層のインターネットに関する利用実情の調査結果報告書から確認していくことにする(【令和2年度版青少年のインターネット利用環境実態調査】)。
今調査の調査要綱は先行記事【スマホもタブレット型端末も3割強…9歳以下のインターネット利用機器の利用状況をグラフ化してみる(最新)】を参照のこと。
次に示すのは直接回答をしている保護者の立場として、その子供がインターネットを使っている際に生じた、あるいは発覚した、困った事柄に関する経験率。回数やいつ経験したかは問われていない。
↑ 子供のインターネット上の困った経験行動(9歳以下、複数回答、子供がインターネットを使っている人限定)(2020年)
具体的行動でもっとも多い回答は「インターネットにのめり込んで保護者が注意しても止めない」で27.5%。テレビ視聴やゲーム、読書などではよく聞く話だが、インターネットの利用でも子供の自制心が効かずに保護者の忠告をも無視するパターンは少なくないようだ。
次いで多いのは「保護者が設定したパスワードが、保護者が知らないうちに勝手に解除されていた」で7.9%。保護者が設定しがちなフレーズを推定して入力解除したのか、保護者の入力したパスワードを盗み見したのか、あるいはすり抜ける方法をどこからか入手したのか。その方法までは問われていないが、いずれにせよ由々しき話ではある。自分の子供のしたことではあるが、立派なハッキングに他ならない。
その次に多いのは「保護者が知らないうちにメッセージやメールを送ったり書き込みをしていた」で4.7%。単純に情報発信をするだけなら問題は無いはずだが、リスクを考えると相手を選ぶ必要があり、また当然内容にも十分な注意が必要になる。それらの問題を考慮すると、メッセージやメールの送信、インターネット上への書き込みそのものを許可しない、許すとしても場所を制限した上で事前に保護者のチェックを必要とするなどのルールを設定している世帯も多いことだろう。そのような状況下で、保護者の目をすり抜けて勝手に情報発信をすることは、保護者にとっては困った話に違いない。
「保護者が知らないうちに不適切な内容が掲載されているサイトにアクセスした」は3.4%。フィルタリングをしていなければ(禁じていても)アクセスされる可能性は多分にある。フィルタリングが使われていてもそれを潜り抜ける方法を見出した、知ったのかもしれない。あるいは偶然にアクセスしてしまった可能性もある。
インターネットに夢中になることで生じるトラブルとしてよく知られている「インターネットにのめり込んで睡眠不足などの体調不良に陥った」は2.8%、「保護者が知らないうちにゲームやアプリで課金した」は2.1%。経験率としては少数ではあるが、内容次第では重大な問題であり、看過するわけにはいかない。
これら列挙された問題を経験したことがない保護者は6割強にとどまっている。もっともこの保護者も、まったく問題なく過ごしているのか、別の問題の経験があるのかまではこの調査結果からだけでは分からない。さらには保護者が気が付いていないだけで、子供はすでに困った行動をしたことがある、現在もしている可能性は否定できない。
これを子供の男女別で区分して確認した結果が次のグラフ。
↑ 子供のインターネット上の困った経験行動(9歳以下、複数回答、子供がインターネットを使っている人限定、子供の男女別)(2020年)
男子の方が多くの項目で女子より高い値を示している。女子の方が高い具体的な内容の選択肢は「保護者が知らないうちにメッセージやメールを送ったり書き込みをしていた」のみ。少なくとも保護者が把握している限りでは、男子よりも女子の方がインターネット上では礼儀正しい、保護者の思う通りに利用しているということなのだろうか。あるいは男子の方が行動的なのかもしれないし、さらには単に男子の方が女子よりも保護者に見つけられやすい行動をしているだけなのかもしれない。
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