40代の母親を刺殺した疑いがあるとして、中学1年生の娘の身柄が保護された事件。関係者によると娘は母親を刺したことを認め、「スマホの件で話し合っていた」と話しているという。
増加傾向にあるスマートフォンに関わるトラブルやルール作りについて、ネット問題に関する国の会議で座長を務める、兵庫県立大学の竹内和雄准教授に聞いた。
スマホは「体の一部」
ーースマホを持っている子どもたちはどれくらいいる?
使い始めが高校生から中学生に下がり、今では中学1年生ぐらいで8~9割が持っています。
今の子どもたちは、スマホは「体の一部」だといいます。もう空気のような存在。中学生は部活の連絡がスマホにくる、クラスの忘れ物とか重要な連絡もそこに来るからなかったらやっていけないと。
連絡は基本LINEで来て、特に女子中学生は「LINEは業務連絡」と言っていて、見落としたら大変なわけです。連絡網みたいな感じでやっているので、自分だけ入っていなかったらものすごく肩身が狭い思いをすると。
もう1つは、コロナ禍で子どもたちがネットを使うのが増えてきて、学校から帰ったらオンラインゲームをしてる。公園でサッカーしたいけど、サッカーやったら近所のおばちゃんに「ボール遊び禁止」だって怒られるし、コロナだから遊べないというわけです。
大人側の責任で子どもが遊べるところがないというのも大きいです。
コロナの影響もあり、子どもたちのネット利用が増えたと指摘する竹内准教授。
最近は「ギガスクール構想」により、小学校1年生からネットにつながることが当たり前となる中、家庭内でのスマホのルール作りには「親子での妥協点を探る」ことが大切だと話す。
“禁止”から“賢い使い方”へシフト
ーーネットの扱いについて、国や家庭はどういうアプローチが求められる?
今までは、できるだけ禁止して、フィルタリングして制限してきました。
しかし、2021年ぐらいに「ギガスクール構想」によって歴史的大転換をしました。小学校1年生から情報端末を持たすようになって、禁止から“賢い使い方”にシフトチェンジしたわけです。
小学校1年生からネットを使うことが前提の社会になっていきます。しかし社会はまだ準備できていないのでトラブルが起きてしまう。
香川県は、オンラインゲームは平日は60分、休日は90分という条例を作ったり、各地でルールの試行錯誤が起こっていますが、まだ何が良いのかはわかっていません。
ーー家族でスマホルールを作る際、何に気をつけるべき?
ネット使用に関しては、内閣府の調べで、2歳ですでに62.2%が使用しています。
親が子育てでネットを見せているわけです。例えば、ご飯作る時にyoutubeを見せて、どんどん関連動画を見ちゃうという流れがあります。
私たちの時代とだいぶ変わってきているので、子どもは子どもなりにいろんな思いを持っていて、一番重要なのは、まず子どもの言い分を聞くことです。子どもがどういう希望を持っているかをまず全部聞いてあげる。全部聞いた上で意見を言わないと、子どもは何も聞いてもらえなかったとストレスが溜まる。
次に重要なのは、聞いた上で、大人で相談する。パパとママの意見が食い違うと大変です。そして、親子のお互いの“妥協点”を見つけるような話し合いをするんです。
まずは子どもの言い分を聞き、親の意見とすり合わせて“妥協点”を探る。
このプロセスが大事だとする竹内准教授はさらに、「社会全体でも考えていく必要がある」として、そのカギは“文化づくり”にあると話す。
スマホ利用にも順序立てたプロセスが必要
ーー「社会全体で考える」とは具体的に?
例えば、日本の社会は「自転車教授法」というのを文化として持っています。子どもが自転車に乗れるようになるには、まず、三輪車、次に補助輪、子ども用自転車、大人用自転車と段階を踏みます。
スマホはそれがないんです。
補助輪は革命的な発明で、その補助輪に代わるものが何なのか、何歳で与えるのかという辺りを私たちは考えて行かないといけない。
iPhoneが2012年ぐらいに広がってきて、その頃はだいたい高校生が持っていました。今は中1に下がってきてちょうど反抗期の時期。反抗期のごちゃごちゃとネットのごちゃごちゃ、スマホのごちゃごちゃが重なって、親と衝突していることが多いです。
「20時に終わる」というルールを決めたのに20時15分までやって親は怒る。子どもとしては、5人でやっているから自分だけ逃げれない。そこで色々話し合って、「20時に終わる」は無理だから「19時45分には新しいゲームを始めない」というルールにした家庭があります。
そういう折り合いをいろんな家庭でやって、それを集約して、みんなでルールを決めたらいいかなと思います。
今は一番言うことを聞かない思春期にスマホを渡していますが、今後は小学3~4年生で持ち始めると思うので、まだ言うことを聞く時期。その間にルールを確定したいわけです。
今の親世代はスマホをよく知らないから、色々な意味で今が一番大変かもしれないです。
4割がネットで知り合った人と会ってる
ーー街で話を聞くと、「時間と使う場所」を守ったらあとは裁量を与えているという家庭が多かったが、信用することも大事?
信用して良いところと信用してはダメなところがあります。
私が大阪でとったデータでは、小4から高3の子どもで、一日4時間使っている子の4割がネットで知り合った人と会っていました。
「コンサート会場で会うから安全」、「同じアイドルを好きな人だから悪い人はいない」と言うわけです。そこに付け込んでくる人もいると注意したら、この人とは話にならないといった感じで子どもにシャットアウトされました。
親は子どもの実態を知らないといけない。基本的には信用していいと思いますが、信用してはいけないとこがどこにあるかを私たちは冷静に見ておく必要があります。
子どもたちの中には「欲に負ける」という自覚がある子もいます。大事なのは、困ったことがあった時、親に相談出来ること。そのためには、親もある程度スマホのことを知っておかないといけないです。
(FNNプライムオンライン1月20日掲載。元記事はこちら)
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