Googleのネットワークカメラ「Google Nest Cam」について、前回は外観およびギミックの特徴、さらにセットアップの手順を紹介した。今回は、実際に使って初めて分かる挙動を中心に、製品のポイントをチェックしていく。
クラウド録画型でサブスク契約は実質必須。遅延は少なく高性能
スマホから閲覧可能なネットワークカメラは、既に多数存在している。本製品はそれらと比較した場合に、どのような点が異なるのだろうか。いくつかの特徴をピックアップして見ていこう。
まず、ライブ映像に加えて、過去の録画データを参照できる機能は、基本的にどの製品も共通だ。最近は、過去の録画データを本体内にではなくクラウドに保存する製品が増えており、本製品もその1つだ。カメラの電源が落ちている場合はもちろん、外出先からであっても、参照できる利点がある。
クラウドにアップロードする録画データは、動きを検知した部分だけに限定される製品と、動きの有無を問わず全体をアップする製品とがあるが、本製品は前者に相当する。ほとんどの製品はこちらの仕組みを採用しており、録画内容にそれほど証拠能力が求められないホームユースであれば、特に問題はないだろう。

ただし本製品は、無料で保存できる時間がわずか3時間と短い。それ以上の長い時間にわたって録画データを保存/閲覧するには、サブスクリプションプラン「Nest Aware」が必須になる。なるべく無料で済ませたいと考えているユーザーには厳しい仕様だ。もちろん、ライブ映像だけならば制限はないが、それならば本製品でなくてもよいだろう。

映像の閲覧において、他社製品と使い比べてすぐに分かるのは、ライブ映像で遅延がおそろしく少ないことだ。Wi-Fi環境はもちろん、モバイル回線経由でも遅延は1秒あるかないかだ。
他社製品だと、同じネットワーク環境で十数秒待たされるのは珍しくないので、これは驚異的だ。USB接続のWebカメラといっても信じそうなレベルである。
また映像の美しさも特筆モノだ。本製品は最大1080pのフルHD、また30fpsのフレームレートに対応しており、画質および動画のなめらかさともに高い水準にある。また「Google Nest Hub」からも高いクオリティーで閲覧できる。詳しくは後述する。
関連記事
被写体の種類とエリアを指定しての通知が可能
本製品のもう1つの強みが、AIによる学習データを用い、動体検知で記録した被写体が人物なのか動物なのか、それとも車両なのかという、種類の判別を行えることだ。人については、登録済みの顔か、そうでない顔かを判定できるので、認識できない人物が映った場合のみ通知することが可能だ。
さらに本製品は、カメラの視野の中における検知対象エリアを最大4つまで範囲指定できる他、被写体の種類と組み合わせて通知することもできる。例えば部屋の「扉」の部分を「人」が通過した時だけ検知するよう設定しておけば、部屋の入退室管理に使えるというわけだ。これらは過去の履歴データから検索する時も条件指定が行える。
これらは検知されるたびにスマホに通知されるので、逐一チェック可能だ。一定時間以内には再通知しない設定になっているため、スマホが通知で埋め尽くされることもない。
個人的には、SNSのミュート機能のように、30分や1時間といった期限を手動で指定してオフにできる機能が欲しかった。これならば自宅前で長時間にわたって工事が行われているような場合も、通知が繰り返し飛んでくるのを回避できるからだ。
ちなみにこうしたAIによる被写体やエリアの判別および指定機能は、先行事例がないわけではない。例えば以前紹介した「SpotCam Eva 2」は、やはりAIを用いて被写体を判別したり、エリアを多角形で指定できたりする機能があり、それぞれを通知する機能をサブスクリプションで提供している。
ただしこれらが、被写体ごとにサブスクのプランが用意されており、積み上げるとかなりの金額になるのに対して(例えば人体検出で月5.95ドル、画面内のモノの盗難検出で月3.95ドルといった具合だ)、Nest Awareはアクティビティーが見られる日数で料金が決まるというシンプルな課金体系で、かつ月額630円からと安価だ。
今回は両者を並べて比較することはできなかったので、AIによる識別の精度まではチェックしていないが、将来的にはこうした機能はネットワークカメラでは当たり前になり、検出と識別の精度、およびそのコスト(月額料金)が、製品選びのポイントになっていくはずだ。
ACアダプターレスで動作も使えるかは「環境および設定次第」
もう1つ、他のネットワークカメラにあまりない特徴として、配線不要で利用できることが挙げられる。本製品は大容量のバッテリーを内蔵しており、ACアダプターをつながずに公称数カ月にわたって駆動できる。
これならば、配線が不可能な場所でも、定期的に充電を繰り返すことで、継続して利用できる。例えば自宅玄関の外側、金属扉の外側にマグネットで吸着させておき、訪問者や、自宅前を通過する人を知らせるにはもってこいだ。扉にわざわざ穴を開けて電源を供給する必要もない。
扉の外側に設置した場合、きちんと通信が行えるかは気になるところだが、本製品はセットアップ時に屋外利用を選ぶと、障害物に強く、5GHz帯と違って屋外利用が可能な2.4GHz帯を自動選択する仕組みになっている。2.4GHz帯ならば、金属扉1枚を隔てた程度であれば、完全に遮られることはない。
ただし2.4GHz帯は他の機器の干渉を受けやすいだけに、安定したスループットという点では5GHz帯に劣る。筆者宅では、2.4GHz帯に設定し、玄関ドアの外側にカメラを取り付けている時に限って、表示したままにしていたライブ映像のプレビューが、いつの間にか終了していたことがあった。
試しにMVNO回線を用いたモバイルWi-Fiルーターを経由して接続しようとしたところ、帯域不足とみられる症状で、ライブ映像は全く表示できなかった。室内で5GHz帯を利用している際は一切見られなかった症状で、ネットワークの帯域確保は重要と言えそうだ。
以下の画像も参考にしてほしい。

もう1つ気になるのは、バッテリーの持ち時間だ。実際に試したところ、連続して1日使用した場合、バッテリーは100%から60%まで減少した。このまま放置しておけば、3日も経たずにバッテリーが尽きてしまう計算になる。
もっとも、これは毎時間ごとに人が通過する場所に設置した場合の話なので、そうでない場所で不要なアクティビティーをオフにするなどして節約していけば、1週間を超えての駆動は可能だろう。とはいえ、同社がいう最長7カ月というのは、かなりやりくりを工夫しないと難しいのではと感じた。

以上のように、きちんとパフォーマンスを発揮できるかどうかは「環境および設定次第」ということになるが、こうしたバッテリー駆動ができるネットワークカメラはコンシューマー向け製品ではほぼ皆無なだけに、貴重な存在なのは間違いない。
例えば夜間に出没する不審者の証拠映像を残すために、何日間かに限定し、玄関前や駐車場に備え付ける用途にはもってこいだ。本製品を指名買いする理由になりうるだろう。
関連記事
スマートディスプレイからのライブ映像視聴にも対応
さて本製品は、同じGoogle Nestファミリーのスマートディスプレイ「Google Nest Hub」で、映像を表示することもできる。
使い方は簡単で、「ねぇGoogle、(カメラ名)を見せて」と呼びかけることで、「はい、(カメラ名)からストリーミングします」という返事とともに、本製品のライブ映像を表示できる。「(カメラ名)を見せて」から実際に映像が表示されるまではほんの数秒程度で、十数秒は余裕でかかる他社のネットワークカメラと比べてもレスポンスは速い。
表示できるのはライブ映像のみで、履歴から過去映像を呼び出しての視聴などには対応しない。ライブ映像を見る以外でできる操作といえば、ダブルタップでズームできるというだけだ。カメラ回りの設定、例えばマイクの有効/無効などは、スマホアプリから行った設定がそのまま適用され、Google Nest Hub上では変更できない。
このように挙動をまとめると、さも制限があって物足りないように見えるが、これをGoogle Nest Hubではなくスマホアプリで見ようとした場合、スマホのロックを解除してアプリを立ち上げ、さらにカメラをタップして開いて……といった手間がかかるのに対し、音声コマンド一発ですぐさま表示できるのは便利だ。本製品とスマホアプリの排他視聴ではなく、同時視聴が可能なのもいい。
これまで本連載で試用したネットワークカメラは、最長10分ほどで画面が自動的にオフになってしまうのが通例だったが、今回試しにオンのまま放置したところ、12時間ほど経過してもライブ映像の画面がそのまま表示されていた。前述のように、Wi-Fiの都合で切断されることはあるとはいえ、システム側で時間が制限されていないのは価値がある。
そのため、例えば自室での作業中に、ドアベルを鳴らさない来訪者、例えばデリバリーサービスの訪問を、玄関に取り付けた本製品の映像を見ながら待ち構えるといった使い方には向いている。Google Nest Hubの周辺機器として見た場合も、優秀な製品と言えるだろう。
高価ながら完成度はピカイチ。屋内専用モデルにも期待
以上のように、本製品は、現行のネットワークカメラで最高峰の機能および性能を備えた製品だ。他のネットワークカメラにあって本製品にない機能といえば、パン/チルト機能くらいだが、これは室内で動き回る子供やペットを追いかけるニーズに対応したもので、カメラとしての使い方が根本的に異なる。機能が不足しているというよりは、ターゲット層が違う製品とみなすべきだ。
その中で、もっともエッジが立った機能はどれだろうか。AIによって被写体を識別/通知する機能は、確かに特徴的な機能ではあるが、前回紹介したSpotCamにも搭載されているし、検知エリアの指定も含めて、オンリーワンの機能ではない。屋外設置が可能というだけであれば、他にも製品は多数ある。
そうした意味で、本製品の最大の利点は、電源ケーブルを外した状態で長時間駆動できることが1つある。また、被写体の識別やエリアの指定といった機能と、他のライブカメラに比べて遅延が少ないといった、ネットワークカメラとしてストレスなく使える総合力の部分だろう。既存のGoogle Home製品と操作性がシームレスなのもよい。

もっとも、こうした機能の豊富さ、さらには完成度の高さから、価格は税込み2万3900円と、低価格化が進むネットワークカメラの中ではかなりのハイエンドだ。いくら製品選びで失敗したくないとはいえ、これまでネットワークカメラを一切使ったことのないユーザーが、これだけの費用をポンと払って購入するのには、ちょっとした勇気が必要だろう。
もちろんバッテリー駆動など、本製品にしかない機能に魅力を感じるのであればいきなり購入しても差し支えないが、まずは本製品よりも先にリーズナブルなネットワークカメラを使って、できること/できないことをしっかりと把握し、それらが不自由と感じた場合に、その上位のモデルとして本製品を導入するという考え方もある。本製品ほどの機能がなくても、満足してしまうことも考えられるからだ。
そうした意味においては、このGoogle Nest Camというシリーズに、もう1つローエンドのモデルが存在していてもよいのではないか、今回試用してみてそのように考えさせられた。本製品は電源アダプター式の屋内用モデルが近日発売予定とされており、ラインアップが広がれば、ユーザーとしてもさらに選びやすくなることだろう。
関連記事
関連リンク
からの記事と詳細 ( サブスク契約は必要? 映像の遅延は? バッテリーの持ちは?「Google Nest Cam」を使って分かったこと:山口真弘のスマートスピーカー暮らし(1/3 ページ) - - ITmedia )
https://ift.tt/39Az1p8
No comments:
Post a Comment